「吃音をからかってごめん」…かつての同級生から届いたメール、「注文に時間がかかるカフェ」奥村安莉沙さんが変わった理由
吃音(きつおん)の悩みを克服し、啓発活動に取り組む奥村安莉沙さん(32)。語学留学で訪れたオーストラリア・メルボルンのカフェで、それまでの価値観を一変させる光景を目の当たりにする。(読売中高生新聞編集室 大前勇) 【写真】これは貴重…高校受験の勉強をする奥村安莉沙さん
かなった「子どもの頃からの夢」
「メルボルンはカフェ文化が深く根付いた街で、たくさんのお店がありました。そのなかに障害のある人や吃音の人が普通に働いているカフェがあったんです。英語がうまく話せない移民の店員もいました。
言葉でのコミュニケーションが難しくても、ジェスチャーで生き生きと接客していて、お客さんも店員が話せないことなんかまったく気にしていません。私もさっそく、そのお店で働かせてもらうことにしました。諦めていた子どもの頃からの夢が、いとも簡単にかなってしまったんです。自分で勝手に『できない』と思い込んでいただけだったんですね。
オーストラリアは吃音治療の先進国でもあって、私も会話をスムーズにするセラピーを受けたり、自宅で発話の訓練をしたりしました。その効果がすごくあって、以前より滑(なめ)らかに話せるようになりました」
帰国後は、オーストラリアでの経験を生かし、吃音の店員が接客するカフェを自らオープンする。
「『吃音があっても接客はできる』。それを多くの人に知ってもらいたくて、2021年8月、住んでいた東京都世田谷区のシェアハウスで、『注文に時間がかかるカフェ』(注カフェ)を開きました。1日限定で、店員はみんな吃音のある高校生や大学生です。
彼らがゆっくり接客できるように予約制とし、入店できるお客さんの数も制限しました。店員が吃音に関するクイズを出すなど、この障害に対する理解を深めてもらうための取り組みも行いました。その後、首都圏の各地でも同じように注カフェを開き、SNSなどで活動をPRしていると、『うちの地域でもやってほしい』という要望がたくさん舞い込むようになりました。今では全国的な展開になり、すでに50回以上は開催しています。