<Jリーグ>記録づくめ第2S優勝、広島を支えた成熟の「可変システム」
そして、広島をJ1屈指の強豪たらしめる最後の要素が「競争意識」となる。指揮を執って4年目の森保監督は、シーズンを通してこんなテーマを設定していた。 「当たり前のことを当たり前のように続けることで、特別な力が生まれる」 競争意識を注入された筆頭がFW佐藤寿人となる。全34試合で先発を果たしながら、フル出場は1度だけ。前半42分に8試合ぶりとなるゴールを決め、中山雅史(JFLアスルクラロ沼津)のもつJ1最多得点記録157に並んだ湘南戦でも、判を押したかのように後半16分にベンチへ下げている。 理由は2つ。代わりに入るU‐22日本代表FWの浅野拓磨の爆発的な縦へのスピードは、後半に入って疲れがたまり始めた相手DFにとっては脅威となる。実際、湘南戦でもカウンターから何度もチャンスを作っている。 もうひとつが選手たちを切磋琢磨させて、成長を促すことだ。中山を追い抜く158点目を「来シーズンに持ち越します」と宣言した33歳の佐藤は、ひと回り年下の浅野へ対抗心を燃やす。 「競争があるということは、経験のある選手、結果を出している選手でも立ち止まっていられないということ。チーム内の競争があるからこそ、クオリティーを高めていける。いまいる場所から少しでもステップアップできるように、これからも努力していきたい」 チャンピオンシップ決勝では、一発勝負の準決勝に臨む浦和とガンバ大阪の勝者と対峙する。 「形はどうであれ、勝ったチームが一番強いと私は思っている」 戦い方に派手さは必要ない。状況にとっては手堅く試合を運ぶ展開も厭わないと、森保監督は静かに抱負を語る。史上4チーム目となるJ1連覇を達成した2013年以来のタイトルを手にしたとき、かつて2度のJ2降格を余儀なくされてきた広島に黄金時代が訪れる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)