<Jリーグ>記録づくめ第2S優勝、広島を支えた成熟の「可変システム」
「流れが悪くなったときにそれまでは攻撃でリズムを取り戻そうとしていたのを、森保監督のもとでは相手の攻撃をしっかりと受けて、自分たちの流れが再びくるまで我慢しようとなった。守備に対する意識が非常に高くなりましたし、今年は特に我慢する部分が際立ってよかったので、リーグ最少失点につながった」 森崎が振り返るように、セカンドステージの最後の3試合はすべて零封。現役時代は「ボランチ」の名称を日本サッカー界に広めた、まさに黒子的な存在だった森保監督の堅実な采配が、得点も失点も多かった前任者時代の派手な傾向を、得点力はそのままキープしながら修正したわけだ。 そして、特異な可変システムは選手補強でも「名」より「実」を取る路線を確立させる。 初優勝した2012年のメンバーと比べると、GK西川周作、DF森脇良太、FW石原直樹(ともに現浦和)、MF高萩洋次郎(FCソウル)らの主力が毎年のように移籍で抜けている。可変システムが生まれた当時に最終ラインを形成していた槙野智章も、いまでは浦和でプレーしている。 広島はそのたびにGK林卓人(前ベガルタ仙台)、DF塩谷司(前水戸ホーリーホック)、MF柴崎晃誠(前徳島ヴォルティス)、FWドウグラス(前京都サンガ)らを補強してきた。 林以外はJ2でプレーしていた選手ばかりだが、そのなかで塩谷は日本代表に選出されるまでのレベルに成長している。2001年から強化部長を務め、今年2月に広島社長に就任した織田秀和氏は言う。 「ウチはチームのスタイルが確立されているので、それぞれのポジションに求められる選手の特徴というものもはっきりしている。この選手が抜けたら同じタイプとしてこんな選手がいる、といった具合にリストアップしているので、その意味では早くフィットしやすいのかなと」 たとえば、湘南戦の後半23分から投入され、右サイドを爆発的なスピードで突破してドウグラスのハットトリック達成をアシストしたMF柏好文。地元山梨県出身の期待の星を、2013年オフに広島へ送り出さざるを得なかったヴァンフォーレ甲府の佐久間悟GM(当時)は、こんな言葉を漏らしている。 「ウチも日本人選手を狙われるチームになりました」 苦笑いを浮かべた表情が、他チームを驚かせる独自の視点で選手を評価・獲得している広島の戦略を物語る。このオフにはリーグ2位の21ゴールをあげたドウグラスの完全移籍での獲得を目指して、保有権の半分をもつ徳島と交渉する予定だ。