《ブラジル》記者コラム= 第1回芸能祭から司会務める藤瀬さん 豪華なフィナーレに込められた想い
趣味レベルとは一線を画した〝芸〟みせる藤間
今回のフィナーレ「大江戸舞の吹き寄せ」は、江戸時代の歌舞伎古典舞踊から長唄、歌謡舞踊など現代の踊りに至るまで9種類の舞がメドレーで披露される豪華なものだった。例えばブラジル人青年の二人が一本歯下駄でピョンピョンと舞いながら、カチカチとタップダンスのように音をさせながら踊る伝統の技も披露され、明らかに趣味のレベルとは一線を画した〝芸〟を感じさせた。 藤間芳琴(よしこと)さんと共に指導に当たる藤間芳誠(よしせい)さん(88歳、大分県出身)に、今回のフィナーレについて尋ねると、「藤間勘右衛門(ふじま かんえもん)からいただいた名前に恥じない踊りをお見せるために、厳しく練習を重ねてきました」と述べ、真っ先に藤間流宗家家元の名を挙げた。 生徒はサンパウロ州地方部やパラナ州にも50人ほどおり、「日本で教わった舞踊の常識を、日本の本式をそのまま見せることを信条にしている」とのこだわりを語った。 来場者の声を聴くと、鈴木マサ子さん(80歳、宮崎県出身)は「毎年来ています。2日間とも朝から最後まで見ている。私が一番感動したのは、43番の剣舞『月夜荒城の曲を聴く』でした。素晴らしすぎて口で表現できません。もちろん、藤間のフィナーレも素晴らしかった。皆さんにお疲れさまと言いたい」とほほ笑んだ。
岩崎さん「たくさんの日本人の前でのショーは、世界でもここだけ」
第32回から手伝っているという芸能祭実行委員長の楠本留巳さんにどうしてボランティアを長年続けているのかと尋ねると、「終わった後の達成感がハンパじゃないんですね。翌年6月の芸能祭のために前年9月から準備を始めるんです。資金集めやポスター用の写真選びから始まり、舞台スケジュールを組むのは気を遣うことがたくさん。途中ではいつも『来年は誰かにバトンタッチ』と思うんですけど、結局はやっちゃうんですね。芸能イベントには藤瀬さんは欠かせない。藤瀬さんと二人三脚で、できるところまでやります」と充実した表情で述べた。 たまたまスケジュールが合ったことから今回の芸能祭に出演した、人力世界一周中に岩崎圭一さん(51歳、群馬県出身)にも感想を求めると、「23年前に日本を出発して70カ国以上、世界を回ってきましたが、こんなにたくさんの日本人や日系人の前でショーをさせてもらったのはブラジルが初めて。ヨーロッパにもたくさん日本人はいましたが、ここのようなコミュニティはありませんでした。ここのコミュニティは本当に大きいし、2世、3世などが一緒になっている」と驚いた様子。 「芸能祭の他の演目とか見学させてもらいましたが、沖縄のエイサーとかヨサコイソーランとか、日本舞踊、和太鼓など、こんなに日本の文化芸能が引き継がれていることに感動しました。そして若い人がたくさん舞台に立っていて活気を感じました。こんなに活発にやっていることを、もっと日本の日本人に知ってもらいたいですね」と感心していた。