1on1に好意的で仕事に前向きな若者でも、あっさり退職してしまう理由とは?
■提案:上司・先輩として「できる限りの行動」を しかし、そんな適格なアドバイスができるケースはむしろレアだ。なぜか。 相手は課題が好物の成長株。そんな若手が直面し、自分では解決策が見つけられず、満を持して1on1でぶつけてくる課題だ。控えめに言って、絶対手強い。 1on1の定石通り、若手の悩みを「そうか、そうか」と聞いてあげたところまではいいものの、「そんなこと私に言われても」と内心思う課題もきっと多くなる。 では、どうしたらいいか。 仮にその課題を放置するとしよう。聞いてあげることが大事なのだから、その役割は十分果たした。オッケーだ。 さて、どうなるか。 そこはオープンでストレートな〈積極志向〉さんたちだ。あの面談は何だったんだろう、とあなたに疑いの目を向け出す。でも上司は忙しいわけだから、もう少し待ってみよう。あれだけはっきり伝えたのだから、完全にスルーということはない(だって、もし自分が上司だったら絶対に放置しない)。 それでも、1週間、2週間とリアクションがないと、どうなるか。 場合によっては、部下はあなたに「残念」「無能」のレッテルを貼りかねない。 ここで一旦、整理しよう。 このタイプの若者との面談は、楽しく、実りあるものであると同時に、あなたの上司や先輩としての実力がストレートに試される場でもあるということだ。 だからきっと、本書を読んでいる何割かの上司・先輩の人は、そんな〈積極志向〉の若者が怖いと思う。 特に、自分はどっちかというと「いい子症候群」ならぬ「いい上司症候群」かも、と思う上司・先輩はなおさらだ。 「こんな部下を持つと大変だなぁ、持ちたくないなぁ」と想像してしまう。何なら、もうすでに残念な上司のレッテルを貼られているイメージすらできるかも。 ここで、僕からの提案を1つ。 もし仮に、元気な部下から、すぐに解決できないような相談を受けたとしても、絶対に放置しないこと。 決して笑って流さないこと。ごまかさないこと。今のあなたができる限りのことはすること。 できる限りのことをして、それでもすぐに改善には向かわないとしても、あなたがしたことをそのまま部下に伝えること。 とにかく正直に話すこと。決してちっぽけなプライドを守ろうと、カッコつけたりしないこと。 その際は、別途時間を作って話すこと。そして、この件は引き続き自分が預かり、今後もできることはしていくと約束すること。 このとき、あなたはこう思うかもしれない。 「現実として、何も改善してあげられていないのに、そんなの意味があるのか」 「残念な上司、話すばかりでめんどくさい上司と思われないか」 その感覚はよくわかる。 でも、もし僕の提案通り、あなたがしたことをそのまま部下に伝えることができたとしたら、そんな心配は無用だ。 その「できる限りの行動」が、彼らが100%望むことだ。 逆に、もし僕が提案したことの代わりに、あなたが余計なプライドを守ろうとしたり、変な言い訳をして部下をごまかそうとしたら、それはきっと見透かされるだろう。 無能レッテルだけでなく、それを隠そうとする「カッコ悪い」レッテルまで追加されかねない。 まとめよう。〈積極志向〉の若者との面談は、あなたの上司や先輩として、ひいては人としての器が試される。
金間 大介