1on1に好意的で仕事に前向きな若者でも、あっさり退職してしまう理由とは?
社員の主体性・自律性の向上を促し、定着率を高めるなどの狙いから、多くの企業で「1on1ミーティング」(1on1)が導入されている。しかし、効果的に実施できている企業は一握りで、1on1を実施しているにもかかわらず、何も語らぬまま会社を辞めていく若者が後を絶たない。なぜ、1on1はうまくいかないのか? 今の若者は何を考えているのか・・・? 本連載は、1on1を核とした世代間コミュニケーションの問題を切り口に、職場の若者を多面的に分析した『静かに退職する若者たち』(金間大介著/PHP研究所)から、内容の一部を抜粋・再編集。若者世代の部下・後輩との1on1の前に知っておくべきことについて解説する。 第4回は、特徴的な3タイプの若者との1on1の「傾向と対策」として、〈積極志向〉タイプの若者の深層心理について解説する。 ■特徴的な3つのタイプの若者との1on1:持つべき意識と対応策 ここから先は、1on1にネガティブな印象を強く持ち、不要と考えるT4〈表面志向〉および、T6〈回避志向〉の心理をもう少し深掘りしていきたい。 また、実は最も1on1に好意的で、仕事にも前向きなタイプT1〈積極志向〉にも、大きな課題が存在する。 それは退職だ。このタイプの人(だと、会社や上司が思っていた例を含む)が、あっさり退職してしまう例が後を絶たない。 そしてこのタイプの退職は、残された側にとって大きなダメージにもなる。 そこでこの〈積極志向〉も深耕しつつ、対応策を検討してみよう。 T1〈積極志向〉の深層心理「普段話せないこととかを話せる、いい機会だと思ってます」 多くの企業において1on1は、普段話しにくいことも共有しよう、という趣旨のもと設定されている。その点において、〈積極志向〉の若者は、とても素直に設定された趣旨を受け取ってくれている。 彼らは主に、1on1をこんな風に捉えている。 上司や先輩がアドバイスをくれる成長の場 やりたいこと(新規案件や部署異動など)をアピールする場 上司や先輩と仲良くなれる場 困っていることや不平不満をぶつける場 こういったタイプの部下との対話は、きっと楽しく、時間もあっという間に超過してしまうことだろう。 ただし、良いことづくめでないことも念押ししておく。それは、最後の「困っていることや不平不満をぶつける場」に込められている。 「今日は何でも話してくれて構わないからね」というスタンスで面談に入り、それを素直に受け取ってくれる気持ちのいい若者、それがこのタイプだ。 彼らはさっそく、自分の業務や所属部署の課題をぶつけてくるかもしれない。〈積極志向〉の若者にとって、助言を踏まえた日々の成長は、仕事をする上での重要な要素の1つだ。 だから、指導も助言も大好物。難解なアドバイスも厳しい助言も、もりもり食べて大きくなる。 言い換えると、舌が肥えている。 もっとストレートに言うなら、日々課題に向き合っている分、人を見る目も養われている。 上司や先輩であるあなたが、すぐに解決策を提示できるような課題であれば問題はない。あなたのアドバイスが、〈積極志向〉の若者の心に刺さり、あなたの上司としての評価はさらに向上するだろう。