カナダ政府が「TikTok」の現地法人に事業停止命令 安全保障リスクを明言も、アプリ利用は禁じず
カナダ政府は、中国発のショート動画アプリ「TikTok(ティックトック)」のカナダ法人に事業停止を命じた。カナダのイノベーション・科学・経済開発省(ISED)が、11月6日付の声明で明らかにした。 【写真】TikTokカナダ法人の事業停止を命じたカナダ政府の声明 ISEDの声明によれば、TikTokの運営母体である中国の字節跳動(バイトダンス)がカナダ法人の設立を通じて行っていた事業に関して、特定の国家安全保障上のリスクが認められた。そのため、「カナダ投資法」の規定に基づいて今回の措置を決定したという。
■TikTokはカナダ政府を提訴へ カナダ投資法は国家安全保障を脅かす恐れがある海外からの投資に対して、カナダ政府が審査を行う権限を与えている。ISEDはTikTokへの命令について、「審査の過程で集められた情報および証拠、さらにカナダの国家安全保障当局および情報機関などの助言に基づいている」と説明した。 これに対してTikTokは、「カナダ法人を閉鎖し数百人の高賃金の雇用を失わせるのは、誰の利益にもならない」と反発する声明を11月7日に発表。カナダ政府の命令に異議を唱え、カナダの裁判所に提訴する方針だ。
ここ数年、カナダ政府は国家安全保障上の懸念を理由に、カナダ投資法の改正を重ねている。2024年3月には、インタラクティブ・デジタルメディア分野への海外からの投資に関するカナダ投資法の適用条件について、政府の見解をより明確化した。 それによれば、敵対的な国家の資金援助または影響を受けた者が、インタラクティブ・デジタルメディア分野への投資を利用し、カナダの国家安全保障にとって有害な虚偽情報の拡散や情報操作を行う可能性がある場合には、カナダ投資法に基づく審査の適用対象になる。
■国民には注意喚起のみ ただし注目すべきなのは、カナダ政府はTikTokカナダ法人の事業停止を命じただけで、カナダ国民によるアプリの利用は禁止しなかったことだ。ISEDは声明の中で、「ソーシャルメディアのアプリやプラットフォームを利用するかどうかの意思決定は、あくまで個人の選択だ」としたうえで、次のように注意喚起した。 「カナダ国民にとって重要なのは、ソーシャルメディアのアプリやプラットフォームを利用する際に、サイバーセキュリティ上の適切な対策を取り、生じうるリスクをきちんと評価することだ。自分の情報が外国の運営者にどのように保護、管理、使用、共有されるのか、どの国の法律が適用されるかなどに注意を払うことが大切だ」