三菱電機が準天頂衛星システム「みちびき」6号機を公開 2024年度中に打ち上げ予定
三菱電機は2024年11月27日、測位衛星「みちびき」6号機(QZS-6)を報道関係者に公開しました。「みちびき」6号機は日本版GPSとも呼ばれる内閣府の準天頂衛星システム(QZSS)「みちびき」を構成する衛星のひとつで、2024年度中に「H3」ロケットで打ち上げられる予定です。 三菱電機、先進レーダ衛星「だいち4号」を公開 2024年度打ち上げ予定(2024年3月12日)
みちびきとは
「みちびき」はアメリカの「GPS」との互換性を確保した日本の衛星測位システムで、準天頂軌道(QZO:Quasi-Zenith Orbit)に測位衛星の一部を投入しています。準天頂軌道は赤道上空を飛行する静止軌道を南北に傾けた軌道で、地上からは衛星が空に8の字を描くように見えます。「みちびき」の準天頂軌道は北半球上空では地表から遠ざかり、南半球上空では地表に近付くように高度が調整されているため、日本付近の上空に長く留まることを特徴としています。 地上で位置情報を取得するには最低でも4機の測位衛星からの信号をキャッチする必要があり、測位精度を高めるためには視界内の衛星の配置がなるべく偏らないことが理想です。 GPSは地球全体をカバーするような複数の軌道に多数の衛星を投入しているので測位には理想的に思えますが、建物や地形に視界を遮られがちな都市部や山間部では信号をキャッチできる衛星の数や方向が限られてしまいます。そんな状況でも、視界を遮られにくい天頂付近に長時間留まれる「みちびき」の信号が加わることで、測位精度が向上するというわけです。
みちびき7機体制の構築に向けて最初に打ち上げられる6号機
2024年11月現在、「みちびき」は準天頂軌道に3機・静止軌道に1機の合計4機体制で運用されています。東京付近から見ると静止軌道の1機に加えて仰角70度以上に8時間留まる準天頂衛星が8時間ごとに代わる代わる飛来しますが、測位に必要な衛星の数は前述の通り4機以上なので、GPS衛星も2機以上見えている必要があります。 そこで、内閣府は測位精度のさらなる向上と、他国の衛星測位システムに依存せず「みちびき」だけで持続的な測位を実現するべく、2026年度からは7機体制で運用することを目指しています。7機体制が完成すれば、日本付近では「みちびき」の信号を常に4機以上の測位衛星から受信できるようになります。 今回公開された「みちびき」6号機は7機体制へ拡大するために新たに打ち上げられる3機の衛星のひとつで、打ち上げ時の重量は約4.9トン、太陽電池パドル展開後のサイズは約19mです。 これまでに打ち上げられた5機(※)との大きな違いとして、6号機には宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めている高精度測位システム(Advanced Satellite Navigation System: ASNAV)の実証を行うためのアンテナが搭載されています。高精度測位システムは測位衛星どうしの距離を測る衛星間測距機能と、地上局から衛星までの距離を測る衛星/地上間測距機能から成り立つシステムです。高精度測位システムによって測位衛星の位置と時刻の推定・予測精度が向上することで、結果的に地上での測位精度も高まると期待されています。 ※…2023年9月に運用を終了した「みちびき」初号機(QZS-1)を含む。