国家という怪物相手に違憲訴訟に素手で挑む(下) 婚外子差別の根絶求める富澤由子の闘い
重病の夫とともに
はじめから二つの違憲裁判を本人訴訟でやるつもりだったわけではない。相続裁判が始まったころはコロナ禍で旧知の弁護士に相談することが難しく、窮余の一策だった。指南書や他の本人訴訟の事例を読み込み、裁判所の書記官に何度も尋ねながら訴状や準備書面を作った。大変だが、自身の体験や思いを存分に伝えられるのは本人訴訟ならではだ。裁判漬けの日々はすでに4年近く。家の中は資料を入れたダンボール箱であふれている。視力が落ち、難聴にも悩まされるようになった。 いつもさりげなく支えてくれた藤田はいま、がんと闘っている。30分座っているのもつらい状態にもかかわらず、裁判所に提出するA4判で9枚の陳述書を書いてくれた。容態が急変することもあり、富澤は「次の裁判期日は行けるだろうか」と薄氷を踏む思いで過ごしてきた。それでも止めないのは、自分と同じ苦しみを若い母子に味わわせたくない、おかしいことは訴え続けなければ変わらないと思うからだ。 富澤の闘いは続いていく。(敬称略)
室田 康子・ジャーナリスト。元『朝日新聞』、『朝日ジャーナル』記者