【エプソムカップ】「異次元」レコードVに見た!レーベンスティールの可能性 〝4歳牡馬は低調〟のレッテルに猛反発
[GⅢエプソムカップ=2024年6月9日(日曜)3歳上、東京競馬場・芝1800メートル] 9日、どんよりとした雲が垂れ込む東京競馬場で行われたGⅢエプソムカップ(3歳上、芝1800メートル)はレーベンスティール(牡4・田中博)が後続を2馬身突き放す完勝で重賞2勝目を手にした。レースレコードとなる1分44秒7(良)の走破時計、勝ち馬のポテンシャル…相手関係を抜きにしても異次元と言わざるを得ないレースだった。低調とされる4歳世代の牡馬勢だが、大阪杯勝ち馬ベラジオオペラとともにこの馬は〝切り札〟となりうる存在かもしれない。 レースは好発を決めたシルトホルン、そして大外枠から気合をつけたセルバーグの主導権争いで幕を開けた。最初の1ハロンを除いて道中はすべてハロン11秒台で流れるよどみない展開の中、勝ち馬は先行集団の後ろをサッと確保。直線入り口では早めに外へと誘導して進路を確保したように、速くタフな流れでも〝安全運転〟に映るようなレース運びから上がり最速となる33秒7の末脚で後続を置き去りにした。 まさに〝異次元〟とも言える勝ちっぷり。見た目の感覚だけではなく数字面もそれを裏付ける。コースレコード1分44秒1がマークされたのは1年のうちでも時計が出やすい秋の東京開催の開幕週となる毎日王冠(22年サリオス)でのもの。しかし、それに0秒6迫る今回は連続開催8週目だ。つまり馬場の荒れ具合が大きく異なる状況下での1分44秒台の価値は間違いなくコースレコードに匹敵するレベルだろう。 そしてその時計を叩き出した馬の能力も〝異次元〟だ。レース後、ルメールは「59キロでいいパフォーマンスをしてくれました。ずっとスムーズな競馬ができました。スタートは良かったし、道中は落ち着いていたし、3~4角の手応えは良かったです。(直線で)だんだん伸びて加速してくれましたし、やっぱり今日は結構楽な勝利でした」と振り返る。上がり3ハロン33秒台を記録したのは勝ち馬のほかに2頭のみだが、その2頭は4角で最後方近くに位置した馬。総合力を問われる流れでのこの着差、上がりの数字からここではレベルが違ったと言わざるを得ず、しかもその走りを鞍上が「楽」と言い切るのだから〝異次元〟のポテンシャルだろう。 指揮官・田中博調教師が「やっぱりレース前の消耗がなかなか激しいので、そのあたりの気性面の課題とは今後も向き合っていかないと、この子のパフォーマンスは出しにくくなるかなと思いますね」と明かすように、まだ課題は残る現状であり、今回の相手レベルでGⅠどうこうは言えないが…時計、そして勝ち馬のポテンシャルには〝異次元〟という言葉がふさわしいレースぶり。少なくとも4歳世代に貼られた〝低レベル〟のレッテルに強烈に反発するパフォーマンスだったことは間違いない。
権藤 時大