アネスト岩田が感じる、”モータースポーツ参戦”の確かなメリット「レースに参戦したからこそできた繋がりがあった」
2023年から『ANEST IWATA Racing with Arnage』としてスーパーGTのGT300クラスに参戦しているアネスト岩田。今年で参戦2年目となるが、レースと異なる業種の同社が感じているモータースポーツ参画のメリットや、長期的視点で期待するものなどについて聞いた。 【動画】レーシングカーに感情が!? スーパーフォーミュラを活用した“人工自我”研究の進捗を東大が発表 アネスト岩田は、コンプレッサーや塗装機器などの製造・販売を手掛ける会社。当初はスポンサーという形でスーパーGTに参戦を始め、2023年にはArnage Racingとのジョイントで『ANEST IWATA Racing』を立ち上げた。以来、同社は様々な形でモータースポーツを活用し、自社の名前や製品をアピールしている。 その最たるものと言えるのが、アネスト岩田が「年に1度のお祭り」と位置付ける『BLUE LINK Fes.』だ。これは神奈川県・横浜市港北区にあるアネスト岩田本社の敷地を使って行なわれるイベントで、スーパーGT参戦体制・参戦車両のお披露目に加え、グランツーリスモのタイムアタックやキッズカート、さらには同社の製品を活用した射的やスーパーボールすくいなど実に様々なコンテンツが盛り込まれている。 スーパーGT参戦前に実施した交流イベントは従業員家族が来場者のメインだったというが、現在の『BLUE LINK Fes.』はモータースポーツファンはもちろんのこと、地域の家族連れも多く来場するイベントとなっている。昨年は約1400名が来場したが、今年はさらにその数を増やし、1720人が足を運んだという。 ANEST IWATA Racingの総監督であり、アネスト岩田では取締役常務執行役員 営業本部長を務める武田克己氏はスーパーGTチームとして参画した1年目を振り返り、次のように語る。 「当社は産業機械メーカーですので、レースと直接的な繋がりがありませんでしたが、この1年で多方面の方からアネスト岩田の名前を知っていただけました」 「“挑戦”という名の下で1年目を迎えましたが、認知度をはじめとして得るものがあったと思っています」 モータースポーツにスポンサーやチームとして参画するのは、数百万、数千万、もしくは億単位と、多額の費用がかかるのは知っての通り。足を踏み入れることは容易ではないだろう。アネスト岩田は、モータースポーツ参画による費用対効果についてどう感じているのか? 単刀直入な質問を武田総監督にぶつけた。 「もちろん、モータースポーツに参戦したから製品の売り上げが上がるだとか、直接的な費用対効果は難しいところではあります」と認める武田総監督。しかし、彼らは既に手応えを感じつつある認知度向上など、長期的視点でメリットになり得るものを見据えているという。 「とにかく私どもは、地域の方々やモータースポーツファンの方々などひとりでも多くの方に、産業機械の小さな会社であるアネスト岩田の名前を知っていただきたいと思っています」 「それがいずれは、こういう(イベントに来場した)小さなお子様たちが大人になった時に『小さい時にアネスト岩田のイベントに行ったな、アネスト岩田のレーシングカー見たな』と思い出していただけたり、ガソリンスタンドにコンプレッサーが置いてあった時に、『アネスト岩田だ、この会社知ってるよ!』と言っていただけたり、そして『コンプレッサーを買おう。あ、アネスト岩田にしよう』と思っていただくことに繋がる……そういったものが必要だと思います」 「そんなベースになるところを私どもはしっかりと固めていきたいです。どこでどう繋がっていくかは分かりませんが、繋がりって大事ですから」 アネスト岩田は、そういった一般層への認知度向上だけでなく、いわゆる“BtoB”の面でもモータースポーツ参入はメリットがあると感じている。レースの現場で自動車産業のビッグネームと顔を合わせ、同じ机を囲んでビジネスの話ができる……これはモータースポーツに参入したからこそできることだ。 実際にレース関係者との“繋がり”を形にした実例もある。アネスト岩田は今年1月、元F1ドライバーでスーパーGTではGOODSMILE RACING & TeamUKYOの監督を務める片山右京が代表を務める自転車ロードレースチーム『JCL TEAM UKYO』とのパートナーシップ締結を発表。同チームの拠点はイタリアのミラノにあるが、アネスト岩田はイタリアをはじめ海外にも多数の拠点を構えているため、その拠点を活かしたパートナーシップで、欧州での認知拡大にも繋げていきたい構えだ。 「今回のイベントでは片山右京さんにもお越しいただきました。当社もグローバルに展開している中で(JCL TEAM UKYOの拠点がある)イタリアにも拠点を持っています。こういったものも、レースに参戦したからこそできた繋がりです。これがひいてはビジネスに繋がっていければと思います」 そう語る武田総監督。様々な“繋がり”を作ることが、やがて大きな“柱”を生むことも期待しているという。 「我々はコンプレッサーと塗装機器というふたつの大きな事業がありますが、さらなる大きな事業をうまく作り上げたい。そのためには色々な“挑戦”をしなければなりません」 「今の殻の中で動いていてもそれ以上のものは生まれないので、第3の柱になるためのヒントが得られるんじゃないか、という思いもあります」 モータースポーツを最大限活かして企業価値を高めようとしているアネスト岩田。このように様々なメリットを見出して参画する企業が今後さらに増えていけば、モータースポーツ業界が活性化していくはずだ。
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