【今週行くべき展覧会】世田谷と六本木で2つの”MINGEI”の展覧会が開催中
その「民藝」のエッセンスを、1960年代に始まった黒人差別撤廃運動「ブラック・イズ・ビューティフル」の物語と重ね合わせ、「アフロ民藝」という新しい価値観を提示するのが「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」だ。 アーティストのシアスター・ゲイツはアイオワ州立大学で都市デザインと陶芸、南アフリカのケープタウン大学で宗教学、視覚芸術を学んだ。愛知県常滑市の「とこなめ国際やきものホームステイ」に参加。酪農家の家にホームステイし、陶芸に打ち込んだ。以来20年間、常滑焼の窯元や作家、現地の人々との交流を続けている。そこで彼は、日常的な道具や雑器に「用の美」を見出す民藝の思想に出会ったという。 ”民藝と「ブラック・イズ・ビューティフル」運動はともに、植民地主義的ヘゲモニー(覇権)への抵抗としてサブカルチャーを称えるための重要な考え方を教えてくれます”
寺院のような静謐な空間から始まり、最後はクラブのようなノリで終わる本展を通して表現される「アフロ民藝」について、ゲイツはこう述べている。 “「アフロ民藝」は、すばらしい陶芸家たちや地域の伝統との出会いが、私の人生と実践にどのような影響を与えたかを認め、祝福するものです” 民藝はどのようにも咲く。本展と「民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある」の両方を観ると、「用の美」が未来に開かれた自由な価値観であることが実感できるだろう。 本展と「民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある」の両方を鑑賞することをおすすめするもう一つの理由は、展示の中ほどに設けられた「年表」にある。世界史、日本史、黒人文化史、民藝の歴史、そしてシアスター・ゲイツの創作過程などが同じタイムラインに沿って、写真や実物展示を交えて壁面いっぱいに構成される。ゲイツと民藝の足跡が広い視野で頭に入る貴重な資料だ。 最後に、両展の最大の共通点は、特設ショップ、ミュージアムショップ が楽しすぎるということ。手ぶらで美術館を後にするのは至難の業だ。 「民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある」 会期:6月30日 まで 会場:世田谷美術館1階2階展示室 住所:東京都世田谷区砧公園1-2 「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」 会期:9月1日まで 会場:森美術館 住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階 BY NAOKO ADO