SF初テストでF2戦士に迫るタイム記録した小山美姫にKCMG土居監督も「びっくりしました」。これまでの着実なステップも評価
鈴鹿サーキットで行なわれたスーパーフォーミュラの公式/ルーキーテストの2日目には、小山美姫がKids com Team KCMGから参加した。彼女にとっては念願のスーパーフォーミュラ初走行となったが、チームもその走りを高評価した。 【ギャラリー】F1ドライバーのオリバー・ベアマン、スーパーフォーミュラ&鈴鹿を初走行 TGR-DC育成ドライバーとしてトヨタのバックアップも受ける小山は、これまで様々なレースカテゴリーに参戦してきたが、中でもスーパーフォーミュラに乗りたいという思いを公言してきた。そして今回の鈴鹿テストで1日限定ながらスーパーフォーミュラのマシンを走らせるチャンスを得たという事もあり、極度の緊張状態にあった様子。KCMG土居隆二監督によると、小山は「緊張して吐きそう」と漏らしていたという。 しかしながら小山はスピンやクラッシュもなく堅実にテストを進めていき、最終的に午後には1分38秒078というベストタイムを記録した。これは同セッションでの19台中18番手、トップから2.5秒落ちというタイムだったが、小山と同じくこの日がスーパーフォーミュラ初走行となったF2ドライバーのファン・マヌエル・コレアと遜色ないものだった(コレアは1分38秒063)。 小山自身は、「自分の与えてもらった環境と、自分の築いてきたここまでのプロセスをまとめたら、37秒台(が目標)」と捉えていたため、その目標にわずかに届かなかったことから悔し涙を流したというが、土居監督は小山のパフォーマンスには驚かされたという。 「小山に関しては、本当に僕らはびっくりしましたね」 「極度の緊張でガチガチの状態でしたが、一度も飛び出すことなく、用意されたメニューをちゃんとこなして、身体も大丈夫そうでした。それでタイムは38秒0。コレアと変わらないですよね」 「僕は(コレアが表彰台に乗った)F2のスペイン戦も見ていましたが、コラピント(今季途中からF1に参戦したフランコ・コラピント)と比べてどこが遜色あるのか、という走りをしていました。じゃあ小山はコラピントと同じくらいで走れるんじゃないの? と間接的には思っちゃうくらいです(笑)」 小山はフォーミュラ・リージョナルの日本選手権でタイトルを獲得した経験があるとはいえ、同カテゴリーの車格はF3とF4の中間。当然ながらF2車両の経験もなく、スーパーフォーミュラ・ライツで使われるダラーラ320も走行経験も浅い。そんな中で小山がこのテストでチームを驚かせる走りができたのは、彼女がこれまで踏んできたステップが関係しているのだろうと土居監督は指摘する。 小山は日本のFIA F4を経て、世界の女性ドライバーとしのぎを削るWシリーズに参戦。さらには前述の通りフォーミュラ・リージョナルで王者に輝くなど、フォーミュラの世界で経験を積んできた。フォーミュラEの女性限定テストで4番手に食い込んだことも記憶に新しい。 しかし最近はドライバーとしての“幅”を広げるという意味合いもありツーリングカーにも進出しており、スーパーGTのGT300クラスにスポット参戦して見せ場を作った他、スーパー耐久でも優勝を経験。ランボルギーニ・スーパートロフェオ・アジアでは、チームを引っ張る立場としてタイトル争いにも絡んだ。 土居監督は特にランボルギーニ・スーパートロフェオでの活躍に感心していたといい、「僕も昔からトロフェオを見ていますが、あのパフォーマンスはすごい。パートナーのチームメイトから信頼されて、(セットアップなども)任されて、速いドライバーとしてリードしていますよね」と評していた。 土居監督はさらに次のように語る。 「F2も乗ったことがなく、この車格のクルマに初めて乗ったわけですから、大したものだなと思います」 「やはり準備ができていたのだと思います。こういう言い方が正しいのか分かりませんが、踏んできたステップがたくさんありますよね。GT3にも乗り、ランボにも乗り、色々なフォーミュラにも乗り、マカオGPにも乗り、リージョナルではチャンピオンを獲り……そういったたくさんの経験があったことで、(SFテストのチャンスに)足がかかったんじゃないかと思います。かかったその足と反対の方の足も宙に浮いていなくて、しっかり地に足ついていたのだと思います」 走行を終えた小山には「世界で2番目に速い乗り物に乗って、それを乗りこなしたんだから、あとは何に乗っても遅く感じるよ。良い経験だったんじゃないの」と声をかけたという土居監督。彼女のさらなるステップに期待していた。
戎井健一郎
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