地下鉄経由で大阪・関西万博の会場に直通 注目の私鉄路線「近鉄けいはんな線」 その全貌を探る
“鉄っちゃんアナ”としても親しまれる鉄道通のフリーアナウンサー・羽川英樹さんのラジトピコラム「羽川英樹の出発進行!」。今回、羽川アナが現地取材したのは、近鉄けいはんな線『長田』→『学研奈良登美ヶ丘』です。それでは、出発進行! 【動画】鉄アナがレポート!近鉄けいはんな線 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 奈良市の『学研奈良登美ヶ丘』と東大阪市の『長田』の13.7キロメートルを結ぶ近鉄けいはんな線は、2006(平成18)年に全通した、近鉄では新しい路線です。大阪メトロ中央線と相互乗り入れしており、大阪市内を東西に横切って『コスモスクエア』まで直通します。来年はこれが、もうひと駅先の『夢洲』まで延伸。大阪・関西万博の会場に直行する唯一の路線として、注目を集めています。 今回は、その近鉄けいはんな線を体感すべく、大阪メトロ中央線との接続駅でもある『長田』から東へ、『生駒』を経由して、『学研奈良登美ヶ丘』までを進んでみました。 『長田』では、近鉄7020系の6両編成、学研奈良登美ヶ丘行に初乗車。この駅で大阪メトロから近鉄の運転士にバトンタッチします。 『長田』を出ると、次の『荒本』までは地下の掘割区間を走ります。『荒本』は高さ115メートルの東大阪市役所の最寄り駅であり、蔵書200万冊を超える大阪府立中央図書館も近くにあります。また大阪モノレール延伸時はここに駅もできる予定です。 『荒本』を出ると車両は地上に姿を現し、阪神高速13号東大阪線の真下を走って『吉田』へ。ここは「よし“だ”」ではなく、なんと「よし“た”」なんです。アナウンサー泣かせの駅名ですね。 そして、真上を走っていた高速道路が左右に分かれ、右が阪神高速、左が第二阪奈に分かれて生駒山地がひろがってきたら『新石切』。「でんぼの神様」でおなじみの石切釼谷(いしきりつるぎや)神社は、ここから歩いて7分ほどのところにあります。 『新石切』を過ぎると全長4737メートルという長大な生駒トンネルに入ります。 さて、この近鉄けいはんな線には、架線もパンタグラフもありません。これは地下鉄と直通することもあって、電気をとり入れながら進むため、線路横のサードレール(第3軌条)から集電する方式をとっているからです。 長いトンネルを抜けると、近鉄けいはんな線の中間拠点『生駒』に到着です。この駅には奈良線・けいはんな線・生駒線の3つの路線が乗り入れています。ゆえに、ホームに立っていれば、いろんな車両に出会うことができるんです。 近鉄乗り入れ用の阪神車両や、阪神乗り入れ用の近鉄快速急行車両。他にも「ならしかトレイン」に、台湾メトロと友好協定を結んだ記念ラッピング車両、万博のパビリオンPR車両も走っています。 また、近鉄けいはんな線には大阪メトロの2種類の車両も乗り入れています。30000A系は、2022年7月に登場。スパークドットをちりばめたデザインが印象的です。 一方、昨年6月デビューの400系は宇宙船のような八角形の斬新なフェイスで、ローレル賞も受賞しました。座りやすそうな背もたれが高いシート、4号車には左右1席ずつが配置されたクロスシートも設置されています。いやぁ、見ていて飽きることはありませんねぇ~! 生駒駅北口には近鉄百貨店も入る商業施設「アントレいこま」があり、南口からは生駒ケーブルの鳥居前駅とも連絡。なかなかユニークな外観のケーブルが次の駅・宝山寺駅までを結び、そこで乗り換えて遊園地もある山上へと向かっていきます。 さて、『生駒』を出て、東生駒車庫のあたりで並行する奈良線と別れ、すぐに全長3625メートルの東生駒トンネルに入ります。 トンネルを出ると駅前に150床をもつ白庭病院がある『白庭台』。そして住宅地がひろがり『学研北生駒』に。ここは、名前の長い大学名で知られる奈良先端科学技術大学院大学や、高山サイエンスプラザの最寄り駅にもなります。 『長田』から22分で、終点の『学研奈良登美ヶ丘』に到着。駅の所在地は奈良市ですが、少し行くだけで生駒市や京都府精華町と接しています。駅からのバス便も、JR学研都市線の祝園(ほうその)駅や、近鉄奈良線の学園前駅などとを結ぶ便が頻繁に運転されています。 なお、平日の最終発車時刻は、祝園駅行き(56系統)が午後11時54分、鹿ノ台北二丁目行き(112・113系統)はなんと午後11時59分。午前0時(24時)近くまでバスが出ているのにはびっくりです! ちなみに、駅の終端には大きな壁画がありました。「平成の古都 奈良」と題した作品は、指頭画師の竹中宗指さんが描いた水墨画。これも一見の価値ありです。 同駅前からは「イオンモール奈良登美ヶ丘」が直結。駅の両サイドからは住環境のよさそうな学研都市の住宅地が広がります。バスで国会図書館関西館、けいはんな記念公園などに行けるのも魅力的です。 けいはんな学研都市と大阪の都心部、そしてEXPO会場をダイレクトに結ぶ、近鉄けいはんな線。来年1月19日には、コスモススクエアから夢洲までの一駅が延伸され、鉄道では唯一、万博会場と直結する路線として注目を集めることになります。万博開催中はかなりの混雑が予想されますので、それまでにぜひ一度乗ってみてください。(羽川英樹)
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