“クラフト酒チョコレート”を中田英寿が監修!ロッテ「YOIYO 酒ガナッシュ <黒龍酒造> 貴醸酒」の開発秘話に迫る
サッカー元日本代表で株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANY代表、そしてPR会社・サニーサイドアップグループの執行役員エグゼクティブオフィサーを務める中田英寿さん、日本屈指の銘酒蔵である黒龍酒造株式会社、製菓会社の株式会社ロッテの3社が、それぞれの強みを活かしてコラボレーションした「YOIYO 酒ガナッシュ <黒龍酒造> 貴醸酒」が2024年11月5日(火)に数量限定で発売。人と人との縁や地方創生といった要素が溶け合った“クラフト酒チョコレート”だ。 【写真】株式会社ロッテの田所啓次さん(左)、株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANYの中田英寿さん(右) 発売に伴い、10月22日に東京・港区にふくい南青山291で開かれた記者発表会見で、「YOIYO 酒ガナッシュ <黒龍酒造> 貴醸酒」が公開された。「YOIYO」シリーズはロッテが展開する“日本に酔う、チョコレート”をコンセプトとした大人向けのブランドで、今回が第18弾となる。 日本酒や日本文化の魅力を国内外に発信するため尽力する中田さん監修のもと、ロッテと黒龍酒造のタッグが実現し、新たな商品が完成した。記者会見では中田さん、開発責任者でロッテ中央研究所チョコ・ビス研究部の田所啓次さん、黒龍酒造8代目蔵元の水野直人さんが、完成にいたるまでの足跡、商品に込めた想いなどを語った。 ■チョコレート×日本酒のプロジェクト始動の背景 「YOIYO」シリーズはこれまでウイスキーとのコラボレーションがメインで、日本酒を採用するのは初めて。「今回は最高においしい日本酒のガナッシュを作ることを目標に掲げ、思い込みをなくす、視野を広げるという面で、日本酒の専門家の方の協力を仰ごうと考えました。ただ、最終的にお菓子として仕上げる必要があるので、日本酒に詳しいだけでなく、お菓子が大好きな方にぜひお願いしたいと思い、中田さんに監修を依頼しました」と、田所さんは経緯を説明。中田さんもオファーを快諾し、プロジェクトが動き出した。 この話を聞いた際、中田さんは「ウイスキーは味がはっきりしていることもあって、比較的(チョコレートを)合わせやすいのかなと思ったが、日本酒の味わいを活かすのはハードルが高い」と率直に感じたという。いわゆる“日本酒チョコ”というと、チョコレートのベースに日本酒を混ぜた商品が多く売られている。中田さんは、「自身が関わるからには、日本酒とチョコレートが互いに引き立て合うものを世に送り出そう」と、細部にまでこだわりながら開発は進んだ。 ■立ちはだかった数々のハードル まず直面した課題が、日本酒の選定。30種類以上の日本酒を取り寄せて試飲し、「純米や純米大吟醸のような日本酒だと、チョコレートやミルクなどの味わいに負けてしまう。日本酒のよさを出すために何が一番いいのだろうと考えました」と中田さん。 田所さんも「最初は大吟醸のお酒など、いろいろな種類を試させていただきましたが、なかなか日本酒の個性が出なかったんです」と振り返る。そこで、中田さんが提案したのが「貴醸酒」。貴醸酒とは、仕込み水の代わりに日本酒を使用した酒で、蜜のような甘さと酸味が特徴。日本酒自体の味わいが比較的濃厚でしっかりしており、酒に含まれる糖分によりチョコレート自体の甘さも控えられることなどから、まずは貴醸酒の採用が決定した。日本酒にも知見の深い中田さんならではの発想で、最初のハードルがクリアされた。 次に課題となったのが、銘柄の選定だった。貴醸酒とひと口に言っても、やはり蔵や銘柄によってその味わいは千差万別。試行錯誤した中で行きついたのが「黒龍」で、貴醸酒はキレのよさと果実香が持ち味だが、「『黒龍』が日本酒の後味の伸びが一番感じられた」と中田さん。ただ、黒龍酒造は過去に他社とのコラボレーションを行った例が少なく、中田さんも「正直、オファーを受けていただけるかわからなかったです」と明かす。 ここで意味を持ったのが、まさに“人と人の縁”だった。黒龍酒造の水野さんは「お仕事をさせていただくうえで、私は“人と人とのご縁”を大切にしていきたいと思っています。中田さんとは15年のお付き合いがあり、黒龍のお酒について深く理解していただいているので、そういった方に今回の取り組みを提案していただけたことで、すごく安心してお話を進めることができました」と、今回のコラボを引き受けた理由を明かした。 ■中田さんの驚くべきこだわりとは? 「使用する日本酒が決まれば、ここで開発は終了、というケースも多い」と田所さん。しかし今回に関しては、ここまで来てもまだ道半ば。探求の日々は続いた。 黒龍貴醸酒の特徴とベストフィットするチョコレートのベースを追い求め、チョコレートのプロフェッショナルである田所さんも「こんなことはなかなかない。さすが中田さんだなと思った」と、中田さんの提案に驚いたそうだ。使用するチョコレートをざっくりと単純化するとミルクタイプ、ビタータイプ、さらにビタータイプの口溶け感をアップさせたビター口溶けタイプの3種類に分けられ、まずは日本酒ではなく水を配合して、それぞれの特徴をつかみ、テイスティングを繰り返したのだ。 「日本酒が何であろうと、ベース次第で日本酒のよさを簡単に台無しにしてしまう。まず日本酒が入っているかどうかではなくチョコレート本来の味わいがわからないと、どこに日本酒が活きているのか、活かしたらいいのかというのがわからないので、まずはそのベースをしっかりわかったうえで、貴醸酒の特徴を出す方法を考えるのが一番重要だと思いました」と、中田さんはその手法を取るよう求めた理由を説明する。このように、ベースの特徴を把握してから、ようやく日本酒とのフィット感を試すフェーズへと移行した。 「『大吟醸、純米吟醸だと、チョコレートに負けるんじゃないか』という中田さんのお話を裏付ける必要があった」と、田所さんが用意したミルクタイプに大吟醸を合わせたものについて、中田さんは「うまいんですよ」と笑う。「けど、本当の意味でお酒のよさが出ているかというと、少し出ていないんじゃないかなと思ったんです」と続けた。また、ビタータイプに貴醸酒を合わせたものについても、田所さんは「ロッテとしては貴醸酒の重層的な甘さが発揮されていて、チョコレートもしっかり味が出ているので、手応えがあった」というが、中田さんに「苦みがあとを引くので、黒龍貴醸酒のアフターをちょっとマスクしている。キレをよくしてもらいたい」と指摘され、ビター口溶けタイプの採用へと行きついた。 最終的に試作品の組み合わせは106種類にもおよび、中田さんが「油脂分の薄い膜のようなものを感じる」と指摘した際には、甘さ、ココアの量、カカオマスの上げ下げなど、実にコンマ数%の調整を繰り返してクリアしたのだとか。 ■コラボレーションだからこそ追求できた“高み” 「本当に勉強になったという感覚があります。恐らく、中田さんとの出会いがなければ途中段階で終わっていた。この高みまでは到達することはできなかったと思っています。中田さんならではのこだわりを見て、『こうあるべきだな』と学んだところです」と話す田所さん。 人と人の出会い、縁がもたらした大きな価値、中田さんの飽くなきこだわりに世界的な企業も刺激を受け、水野さんも「私も中田さんと一緒に試食をして製造工程も見させていただき、うちのお酒のよさ、お互いのよさを引き出すのはなかなか大変だなと思っていたんですけど、最終的にはきれいにまとまって、それぞれのよさを引き出せたのかなと思っています。出来上がった商品に関して、私も非常に満足しています」と納得の表情を浮かべた。 こだわりはパッケージにも及んだ。「少し雰囲気のいい高級なバーなどで食べられるようなものを想像したり、贈答品としてあげられるようなものを考えたりしたときに、シンプルだけれど、上品なパッケージがいいと思った。チョコレートの売り場を想像したときに、なかなかそういう商品ってないんですよね」と中田さん。黒龍のコーポレートカラーであるブルーを基調にしたシンプルなデザインに、こだわりが詰まっている。 完成にいたった今、中田さんは「苦労はいっぱいありましたよね。まぁ、ホッとひと息というところです」と笑みを浮かべる。そして、「食べ終わったあとに口の中に無駄な味、アルコール感、甘さ、苦さ、シブさが残らない日本酒がいいお酒だと思っているし、今回の黒龍のお酒はアフターの長さときれいさが際立っているので、そういったチョコレートに仕上げるべきだろう、と。何個でも食べ続けられる、ひとつ食べると水が飲みたいとか、コーヒーが飲みたいとかではなく、またすぐ食べたくなるチョコレートってどういうものだろう?というところも含めて、田所さんと話をしながら、無理を言った部分もあります。考えずに手が伸びるのがいいお酒で、お菓子もおいしいものにはつい手が伸びてしまう。そこが重要なのかなと思いますね」と語った。 人と人との縁が実現させたコラボレーション。その意味について、田所さんは「自分の視野の狭さを知る、視野を広げていただける、視座を高められるというのがコラボレーションの醍醐味だなと思っています。とてもじゃないですけど、中田さんや水野社長と出会わなければ、こんなところに到達できていない。これが何よりの証拠だと思っています。決して井の中の蛙になってはならないと常に思っているのですが、こういったコラボレーションで自分が殴られたような感覚になることが醍醐味だなと感じています」と熱い言葉を紡ぐと、中田さんも「重要なのは、新たなこと、ひとりではできないことに挑戦できるということ。その挑戦自体が一回でうまくいかなくても、新たな試みをすることで自分のさらなる可能性を引き出せると思うんです」と呼応した。 こうした取り組みの結果、日本の文化や日本酒の広がりが生み出され、地方創生にまでつながることに、中田さんは大きな意味を抱いていることを明かす。 「これだけ訪日外国人も増えている中で、日本酒に関する興味が増えているのも感じています。さらに新しいタッチポイントが増えるこういった取り組みは、多方面でやっていくべきです。地方をまわっていると素晴らしい生産者はたくさんいますし、でも多くの場合は世界を見て動けていなかったり、世界を見た経験がなかったりして、どうしても考え方が小さくなっていたりする。ロッテという世界的な企業や海外にも進出している黒龍さんのようなプラットフォームを使うことで、さらに世界に視野を広げて、そこの流通も考えていける。そうしたことを行政がやってくれるのを待つのではなく、現場で、自分たちで動いて起こしていく必要性があります。可能性があるコンテンツは地方に眠っていますし、そういった意味では、今回のようなことをより多く、広く考えていくことで、地方創生や経済を浮揚させることにつながっていけばいいなと思っています」 ※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります