過去の「自分の苦労」を部下に強いる上司は三流以下…優秀な上司が部下に仕事を依頼する前に欠かさない“たった1つのプロセス”【マネジメントのプロが解説】
「後出しジャンケン」がクセになっている上司の問題
「とりあえずやれ」 「まずは手を動かせ」 と指示し、後からやり方を披露するアプローチは、部下の成長に悪影響を及ぼす。「後出しジャンケン」のような指導は、経験学習サイクルの本質を見失わせるからだ。 このサイクルは、(1)経験すること、(2)多面的な視点からの振り返り、(3)新しい考えや理論の創造、(4)それらの試行、という4つのプロセスから成る。 しかし、実際には若い人々がこのサイクルを適切に遂行するのは難しい。特に、新しい考えや理論を作り上げることは非現実的である。 マネジャー自身も難しいはずだ。
ダメ出し版「経験学習サイクル」が部下に与える悪影響
たしかに、今の世の中はノウハウであふれている。しかし若者に仕事を任せるときに、 「まずは経験。ダメ出しは後」 これを繰り返していると、部下は「でも」「だって」「どうせ」といった、「D言葉」を使うクセがついてしまう。 「でも無理です」 「だっていつもそうじゃないですか」 「どうせ自分が考えても否定してくるでしょ? やっても意味ないですよ」 このように、不貞腐れるのだ。 ダメ出し版の経験学習サイクルは、次のような4つのプロセスを踏むだろう。 (1)実際に経験する (2)ダメ出しされる (3)自信喪失する (4)新しいことを試したくなくなる マネジャーがとりあえず感覚で部下に仕事を投げると、部下も「とりあえずこなす」ことが目的になってしまう。これでは、いつまで経っても部下は育たない。
仕事を依頼する「前」にすべきたった1つのこと
したがって大事なことは、前提を揃えることだ。どこまでの仕事をしたらOKなのか。そのための仕事のやり方はどんなものがあるのか。それを言葉にして、事前に認識合わせをする。 では具体的にどうしたらいいのか? 心がけることはたった1つだけ。それは「見通し」を立てることだ。 「見通し」とは、ものごとの進展や将来を予測すること。具体的には、「初めから終わりまで」が明確に見通せるかが重要だ。 たとえば、分析の依頼をする場合、どのようなパラメータが重要か、それをどう分析し、結果をどうまとめるかという点を、部下に問いかけることで明確化させるのだ。 急かさず、否定せず、丁寧にやろう。困ったときには、掘り下げる質問を繰り返してみる。 「より具体的には何をすればいい?」 「たとえば何がある?」 具体的に掘り下げるには、この2つの質問は便利だ。 部下の考えを促すコツは、尋問にならないよう柔らかい表現で質問していくこと。そして適宜助け船を出すこと。上司自身もわからなければ、素直に伝えるのもいい。 「実は私もわかってないんだ。一緒に考えないか?」 「そうなんですね。お願いします」 この共同作業によって「見通し」が立つと、仕事の進行がより明確になり、部下も自信を持って取り組むことができる。 とはいえ、どんなに精度の高い「見通し」を立てたとしても、想定していなかったことは起こるものだ。それでも、「見通し」を良くすることで、未来への希望が持てる。前に進もうとする気持ちが晴れやかになるのだ。 横山 信弘 株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長 経営コンサルタント ※本記事は『若者に辞められると困るので、強く言えません』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
横山 信弘