つんく♂楽曲のすべてに通底する「本質」とは何か?「LOVEマシーン」も「ズルい女」も根本は同じ
歌は特殊なものに思われがちですが、これは例えば書く仕事に置き換えればわかると思います。記事の見出しの作り方にしたって、数をこなしていくうちに、「こうすれば読まれる、いい引っ掛かりになる」というのはあるんじゃないでしょうか。それと同じです。 やっぱり、感覚で覚えていく部分がどんな仕事にもあると思うんですよ。僕もずっとヒットする歌詞が書けたわけじゃないし、ヒットした曲の陰には無数のボツもある。 ただ、才能の領域という話でいうなら、僕の場合は幼少期から歌謡曲やポップスを聴く耳がちょっと普通とは違ったかもしれない。
このメロディーにこの歌詞を乗せるのはどういうことなんだろう。同じようにCMソングとしてよく聴く曲なのに、興味を持てない曲もあれば、つい歌いたくなる曲もあるな。歌詞の内容を意外とみんな覚えていないんだな。洋楽には、歌詞の意味はわからなくてもサビだけ歌える曲があったりするな、とか。 そうした音楽に対する読解力は僕が個性として持っていた部分かもしれない。そして、音楽が好きだった。であれば、あとはひたすらその読解力を磨くこと。訓練ですね。
――作詞をするときに、新しい発想が生まれるのはどういうところからですか。 今の時代に「電話のダイヤル回して」という歌詞は伝わらないから時代は意識するけれど、今っぽい新しい言葉を入れたらいいかというと、そうじゃないと思う。流行り言葉にこだわる必要はない。 でも、時代が変わっても人の心の中ってそう大きく変わらない。定番は、初恋なのか片思いなのか、友情なのか家族愛なのか、とか。 ■人がSNSに書きたいことって、だいたい「眠たい」
僕は毎日思うことがあるんです。人がSNSに書きたいことって、だいたい「眠たい」か「おなか減った」、あとは「時間がない」ぐらいじゃないでしょうか。書こうかなと思ってやめたり、たまに実際に書いちゃったりするけど、言いたいことってそんなものなんですよね。 歌詞の基にしているのは、そんな普通の感覚。そう大したテーマではないんですよ。あとは、テーマを初恋にするか家族にするかという違いや、主人公が曲ごとに変わるというぐらいのことです。