持ち帰りルールや小盛り対応...福島県内の飲食業、食品ロス削減へ本腰
本来食べられるのに捨てられる「食品ロス」が深刻な問題となる中、対応に向けた動きが加速している。厚生労働省は昨年末、飲食店の廃棄削減の動きを後押しするため、食べ残した料理の持ち帰りに関する指針案をまとめた。福島県内でも来店者が衛生的に持ち帰るためルール周知や食べ残しを減らす工夫が見られるなど、削減の動きが広がっている。 「ルールがあれば客が料理を残さないように無理して食べずに、持ち帰りやすくなる」。伊達市の「海鮮小料理居酒屋 番々」店主の菅野正彦さん(78)は指針案策定を歓迎する。 今回の指針案では、消費者の自己責任を前提とし、一定の食中毒などのリスクがあることを認識した上で事業者側の指示に従うことなどを求めた。同店では県の食べ残し削減などに関する協力店の認定を受け、希望者には残したご飯などを容器に詰めて持ち帰ってもらっている。その際、冷蔵庫での保存や短期間で食べるようになどの注意を伝える。国に対しポスターなどを作製し「店側で周知を図れるようにしてほしい」と話している。 福島市の杉妻会館は20年ほど前から食品ロス削減を推進している。忘・新年会プランでは、乾杯後30分とお開き前30分は自席で食事に集中するよう幹事に依頼。大皿からの取り分けはスタッフも協力する。食べ残し率は約15%と低く、廃棄はほとんどない。 館内のレストランや居酒屋ではご飯の小盛りなどに対応し、食べ残し率はほぼゼロ。「料理人の思いも無駄にしたくない」と椿太市副館長。魚を一本買いして骨や皮はあら汁に使うなど、努力を重ねる。ただ、食べ残しの持ち帰りには食中毒などのリスクへの懸念から今後も応じない方針という。 いわき市小名浜のコーヒー専門店「養田珈琲」店主の養田勇さん(53)は指針案に一定の評価を示す一方、店側の努力の必要性を訴える。高齢者などが持ち帰り食品を一定期間放置しても「大丈夫だろう」と食べてしまい、食中毒になるケースが考えられるためだという。「何かあった際に自己責任とするのは良くない。高齢者などには店などで注意喚起をすべきだ」と力を込める。 厚労省の指針案は居酒屋やレストラン、ホテルの宴会などでの持ち帰りを想定。基本的に事業者が用意した容器を使用し、消費者が移し替える。生ものや加熱が不十分な食品は適さないとした。 食中毒の発生時は保健所が調査し、事業者側に不備があった場合は事業者側に必要な措置が取られることを盛り込んだ。厚労省のほか、消費者庁でも法的責任に関する指針の策定を進めており、今後二つを統合し新年度から運用を始める。 政府が公表した2022年度の食品ロスは推計472万トン。約4分の1が外食産業から発生し、その要因の約5割が食べ残しとの推計もある。
福島民友新聞社