ソン・ガンホ「サムシクおじさん」でドラマに初挑戦“映画とは異なる魅力を感じた”
俳優ソン・ガンホが、「サムシクおじさん」の撮影のビハインドを語った。 最近、ソウル三清洞(サムチョンドン)のカフェで、Disney+「サムシクおじさん」に出演した俳優ソン・ガンホのインタビューが行われた。 同作は、「戦争中も毎日3食(サムシク)を食べさせた」という通称サムシクおじさん(ソン・ガンホ)と、皆が飢えることなく豊かに暮らせる国を目指すエリート青年キム・サン(ピョン・ヨハン)が出会い、苦境の時代に夢を叶えるべく奮闘する物語を描いた。 ソン・ガンホは、毎回圧倒的な演技力を披露し、名実ともに韓国の国民的俳優であることを証明した。 この日彼は「サムシクおじさん」を通じて初めてドラマに挑戦した感想について、「よくご存知の通り、映画ばかりやっていたのでドラマは初めてでしたが、撮影期間が特に映画より長かったとは言えません。しかし、Disney+は毎週公開されるので、そういった部分では新しい経験だったように思います。それが嬉しくもあり、映画のように一気に公開されるわけでもなくずっと露出されている状態なので、胸がいっぱいで面白い、複雑な気分でした。毎週公開されるので、『今回は面白い。今回は後半がちょっとルーズかな』という気持ちはありました。いつも4時になると、ワクワクしました」と明かした。 評価が分かれることに対しては、残念な気持ちも語った。彼は「もちろん残念な気持ちもあります。新しい視点でもっとコミュニケーションしたいという気持ちはいつもあります。またその逆もあります。いつも多くの方々にに愛されてきたので、結果よりも、自分がどのような姿勢で作品に臨み、俳優としてどのような活動をしていくのかも、僕には宿題であり、最も重要なポイントだったように思います。『クモの巣』も、実はシナリオが持っている魅力と、物語が持っているオリジナリティが僕の心を揺さぶったのであって、公式に従ったら絶対に選べない作品でした。愛される作品の公式は、誰が見ても決まっています。そのような作品も尊重されなければなりませんが、僕はそれよりも、僕たちの結実をどのように見せられるかということを悩んできたと思います。結果が伴ったらなおさらですが、良くても悪くても、謙虚に受け入れる準備ができていますし、そうすべきだと思います」と自身の考えを語った。 また彼は「僕はDisney+の選択を尊敬しています。危険性が十分内在しているにもかかわらず、果敢に韓国のコンテンツに対する自信、誇りのようなものがあったからこそ、関係者の方々も果敢な選択ができたと思います。結果はご存知のように、グローバルな成功にはつながりませんでしたが、そのような決断があったからこそ、このようなドラマをアジア各国でも、アメリカでも見てもらい、『このようなドラマもあるんだ』と言えるのだと思います。Disney+が刺激的なものだけでなく、真面目なものもやるというのは、尊敬できることだと思います。感謝しています」とつけ加えた。 ドラマに初挑戦することになった理由については、「2000年初頭、90年代末、僕が映画『クワイエット・ファミリー』を撮影したばかりの新人だった頃、少しドラマのオファーがありました。その時は、その気がなかったんです。その後、20年、30年近く映画をずっと続けているうちに、世界的なコンテンツの方式が多様化する時期に入りました。そのため自然にドラマをするようになりました」とし、「他の俳優たちがOTT(動画配信サービス)作品に出演しているから自分も飛びついたわけではなく、今は映画もあるけれど、世の中が変わってきたからそうなったのだと思います。世界的なきっかけもあったかと思いますが、多くのチャンネルが以前より多様化しました。映画というジャンルにこだわる理由がなくなったのです」と話した。 続いて「なぜ『サムシクおじさん』だったのかと聞かれたら、僕だけでなく、創造性を発揮するアーティストの基本だと思いますが、新しい視点から出発する作品に対するニーズがありました。そのような理由で、シン・ヨンシクという監督に注目していました。例えば『空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~』を書いて制作する時、尹東柱(ユン・ドンジュ)という詩人とその詩についてはよく知っていますが、詩人の足跡は深く考えたことがなかったので、その点が新鮮でした。シン・ヨンシクという脚本家が、定型化された視線ではなく、僕たちが知ってはいるけれど、見過ごしていた隙間の美しさを捉える視線があることを知りました。そのようにして会い始め、『サムシクおじさん』もその一環として出発しました。この速い世の中で、しかも50年前の物語に誰が興味を持つかと思うと挑戦できないと思いますが、果敢にその物語を通して現代を生きる我々の姿を省みることができるという点が新鮮に思えました」と説明した。 ドラマと映画撮影の違いについては、「映画もドラマも、演技に取り組む姿勢や事前の作業は同じです。ただ、ドラマは分量が多いです。環境は似ていますが、こなす分量が非常に多くて、技術的な準備のようなものは違いますが、根本的な準備は同じだと思います」とし、「その中でも難しいのは、映画は人物の象徴的な演技や感情を一瞬で見せなければならないというプレッシャーがあるのに対し、ドラマはそういったものを少しずつ分散して適切に人物を積み上げていくという点が良いと思います」と振り返った。 ソン・ガンホが考える「サムシクおじさん」に対する話も伝えた。彼は「サムシクは実在の人物でもなく、背景としては韓国社会の激変期に存在した架空の人物です。しかし、その人物を通してその時代の人を考えるだけでなく、今の私たちの暮らしの中にも、サムシクという人物、キム・サンという人物など、様々なキャラクターがどこにでも存在できると思いました」と語り、「少し難しいですが、私たちの顔を見つけてもらう職業が俳優だと思います。誰もが知っている顔でありながら、画面を通して忘れていた私たちの顔を、俳優の演技を通して見つけるのだと考えてきました。そのような意味で、サムシクもそのような人物であってほしいと思いました。もっと大きな観点から見ると、このドラマも視聴者にそのように近づいていってほしいと思いました」と伝えた。 また、サムシクとキム・サン、カン・ソンミン(イ・キュヒョン)の関係性にも言及した。ソン・ガンホは「キム・サンという存在は、サムシクにとってロマンだったと思います。サムシクという人物は、幼い頃から生きてきた環境が厳しく、人間として最も悲惨な環境だったんです。詳しいことは描かれませんが、日本でお金をたくさん稼いできた人のようです。その人が持っている人間らしい暮らしと社会に対するロマンを実現させてくれる、最も純粋で、自分が持っていない純粋さと情熱を、キム・サンの中から発見したのではないでしょうか。自分が考えていた理想的な暮らしと社会を実現させてくれるロマンの対象として考えました。そのため、愛着を持ってしがみついたのではないかと思いました」と分析した。 続いて、「カン・ソンミンとサムシクは、愛憎というべきか、憎しみと愛情、哀れみなどに満ちた関係ではないでしょうか。幼い頃から保護され、愛されてきましたし、その見返りとして嫌なことをしてきました。カン・ソンミンの生まれ育った環境をよく知っているからこそ、同情もあったはずだし、それでも自分を信じて頼りにしている存在に対する愛情もあったと思います。説明できない複雑な感情ではないかと思います」と振り返った。 共演俳優たちとの相性も伝えた。ソン・ガンホはピョン・ヨハンとイ・キュヒョンに対して「2人とも本当に、なぜ視聴者に愛されているのか分かりました。感心しました。特にキュヒョンさんはすごい俳優だと感じました。カン・ソンミンの本心が唯一出ていたシーンが、倉庫でのシーンでした。愛憎の関係だと話しましたが、サムシクもとても悲しかったと思います。本当に保護してあげたくて、彼の成功を祈ったでしょう。悲惨な最後を迎える姿を見た時、サムシクの心は、悔恨だけでなく、様々な感情があったと思います。ピョン・ヨハンさんもソ・ヒョヌさんもイ・キュヒョンさんも、この3人組の熱演がこのドラマの柱になって支えてくれたと思います。3人に感謝を伝えたいです」と語った。 また、「他の3人組も絶賛したいのが、チン・ギジュさんに一昨日だったか、初めてメールを送りました。『本当に苦労したと思うし、いつもメールしたいと思いながらできなかったけれど、本当に素晴らしかった。抑えていた感情が、時には純粋で精巧だった』というメールを送りました。本気でそう思いました。(少女時代の)ティファニーさんは歌手出身ですが、自分の役目を十分に果たしたと思います。オ・スンフンさんは今後、韓国ドラマや映画界で柱となり、顔となる十分な能力と魅力を持っている俳優ではないかと思います」とつけ加えた。 厳しい映画産業に対する考えも語った。ソン・ガンホは「映画だけでなく、ドラマの現場も好況の時より、簡単な環境ではないと聞きました。それでも絶えず挑戦し、映画でもご存知のように、本当に優れたコンテンツは素晴らしい成果をあげています。それを見ると、観客はいつも待っていて、よくできている映画には拍手を送る気持ちがあるので、作り手の私たちとしては大きな勇気をもらっています。映画も、これからも映画ならではの魅力とエネルギーを持ち続けたら、十分愛してもらえると思います。ドラマや映画界でももう少し努力して最善を尽くせば、決して悪くはないと思います」と答えた。 次回作についてもコメントした。ソン・ガンホは「期待する次回作はあるか?」という質問に「僕は選択される人なので、良い作品に選ばれたいだけです」とし、「僕はストーリーそのものが気になります。キャラクターよりも、ストーリーがどれほど斬新なのかが一番最初に目に入ります。その次に、自分がどのようなキャラクターなのかを見ます。物語全体がどれほど自分の心を揺さぶるかが第一です。作品が良ければ、カメオも当然やります。いくらでも」と答えた。 今後のドラマへの挑戦の可能性についても、「もっとやりたいです。グローバルな題材で、グローバルにコミュニケーションしたいという欲もあります。ドラマをやってみたら、映画とは異なる演技の面白さも感じています。映画は2時間という限られた時間の中で、エキスを最大限引き出さないといけないというプレッシャーがあるのに対し、ドラマはもう少し細かく、親切に視聴者の皆さんに自分の演技、キャラクターを説明できる物理的な時間がもう少しあるという点で、役者としては楽しく、モチベーションも上がります。正直に言って、ドラマはとても面白いと思いました。だからと言って映画が面白くないという意味ではありません」と笑いながら、「機会があればまたやりたいというのが正直な気持ちです」と話して目を引いた。 最後に彼は「僕はサムシクとは違って、大きな計画はありません」と話して笑い、「俳優は長い人生を一緒に歩む同伴者です。重要な瞬間が(俳優の人生に)来ることは来ますが、それを目的にしてはいけません。俳優は長い人生と一緒に進むマラソンランナーだという考えを持って、一歩一歩進むものであって、壮大な抱負や計画を立ててやっていくものではないと思います。一歩一歩進んでいくこと自体が素晴らしいことです」と述べた。 そして「公式が決まっている作品も尊重します。そのような作品は、ある意味で成功が保証されているところもありますが、新鮮さには欠けています。『パラサイト 半地下の家族』も『ベイビー・ブローカー』も、大きな賞を取ってから変わったことはなく、いつも新しい視点を持とうと努力してきたように思います。それが成功することも失敗することもあります。危なくて見慣れなくて怖い気持ちはありますが、それでも俳優としてやる気が湧いてくるポイントを常に探そうとしています。結果が良ければ最高ですが、思い通りにならないのが人生だと思います。もともと役者としていつもそのように選択して考えてきたので、これからもそうしていきたいと思います」と抱負を語った。
ユ・スヨン