〈やっぱりあの国⁉︎〉相次ぐ海底ケーブル、海底パイプラインの破壊工作、日本が他人事ではいられない深刻な理由
発電事業に乗り出す石油メジャー
米国の石油メジャーは電力需要増をビジネスチャンスと捉えている。12月11日付けニューヨークタイムズ紙は、米石油メジャー最大手エクソンモービル初の発電事業を報じた。 エクソンモービルは、データーセンターに天然ガス火力による電力を供給すべく用地を手当てし、需要家候補と交渉を開始している。 5年以内に発電を開始し送電網にはつながずにデーターセンター専用に電力を供給する。送電網を利用しないので、事業開始までの時間が短くなる。 排出される二酸化炭素を捕捉し地下に貯留する装置も設置するとしているので、熱心に温暖化問題に取り組み低炭素電源からの電気を優先的に購入するGAFAMに電力を販売する可能性が高そうだ。発電規模は150万kW。建設地点は公表されていない。 エクソンモービルに次ぐ米石油メジャーのシェブロンも送電網につながない発電事業を検討中と明らかにしている。データーセンターの建設スピードを睨んだ発電事業だ。 欧州系石油メジャーの動きは異なる。英BPは米東海岸の洋上風力事業から撤退した。シェルも、洋上風力発電事業への新規投資を中止し、石油、ガス事業への投資に振り向けると発表した。欧米石油メジャーの方向は異なるが、より収益性の高い事業へシフトしている。
この事業にも課題がないわけではない。設備供給と工事を進める人材だ。米国では発電関連設備が不足し始め、納期が延び始めている。関連設備を供給する企業の株価が大きく上昇した。 たとえば、今年GEから分社化されたタービンを製造するGEベルノバの株価は、4月1日の142.02ドルから12月17日に328.34ドルまで上昇している。 日本は安全保障上必要とされる発電設備を新設できるのだろうか。設備と人の問題に加え、支援制度の問題もありそうだ。
第7次エネルギー基本計画を実現可能か
12月17日に経済産業省は、第7次エネルギー基本計画の素案を発表した。日本の電力需要は、2000年頃まで成長していたが、その後伸びが止まり10年頃からは減少期に入った(図-3)。 第6次エネルギー基本計画では、この電力需要減少を反映し、30年度の電力需要の減少が想定されていたが、データーセンター、半導体工場新設、電化の進展を反映し、第7次エネルギー基本計画では40年度の発電量は、23年度の9854億kWhから1.1兆から1.2兆kWhに増加するとされた。 40年度の電源の内訳は、原子力20%、火力30%から40%、再生可能エネルギー(再エネ)40%から50%だ。23年度9.8%の太陽光発電が22%から29%に、1.1%の風力が4%から8%に大きく増える想定だ(図-4)。 再エネについては、電気料金上昇と引き換えに固定価格買取などの制度により導入を進めることは可能だろう。一方、安定的な電力供給に必要な原子力の目標を達成し、維持するためには設備の建て替え、新設も視野に入れる必要がある。 自由化された市場では将来の電気料金について予見性が失われ巨額な設備投資は実行されない。投資を支援する制度の創出は待ったなしだ。 設備新設を支援する制度がなければ、建設は進まず、設備も人材も日本から失われ、やがて国の安全保障も脅かされる。数値目標を掲げるだけでは意味はない。実現への道筋を示す必要がある。
山本隆三