〈やっぱりあの国⁉︎〉相次ぐ海底ケーブル、海底パイプラインの破壊工作、日本が他人事ではいられない深刻な理由
安全保障と経済成長に不可欠な電力供給
日本も海外の多くの地域と海底ケーブルでつながっている。通常複数回線のケーブルが敷設されているので、事故による切断であれば大きな問題が起きる可能性は小さい。しかし、破壊活動は別だ。 海底ケーブルが破壊工作の対象になる可能性があるのであれば、生成AIの利用が防衛から交通部門まで社会のさまざまな分野で広がる中で、データーセンターの海外立地はできない。 データーセンターを国内に立地する大前提は365日、24時間絶えることのない安定的な電力供給だ。十分な電力供給は安全保障にとっても重要だが、経済成長を支えるためにも必須だ。 AIの高度化と急速な広がりによりデーターセンター向け電力需要量は急増するとみられているが、そこへの電力供給ができなれければ、データーセンターも必要とされる半導体製造工場も国内には立地できない。
AIの活用では世界の先頭を走り、世界のデーターセンターの約半分が立地する米国では、大手IT企業、GAFAMが自社のデーターセンター用に電力供給を独自に確保する動きを活発化させている。 米エクソン‐モービルなどの大手石油メジャーも、データーセンター用に電力を供給するため天然ガス火力の発電事業に乗り出した。
データーセンターと原子力発電
AIの利用が拡大する一方、その能力も向上しているが、使用する電力量も増えている。ただし、今後の電力需要量の伸びについては、不透明な部分もある。 ひとつはGPU(画像処理装置)の能力向上だ。さらに電気信号に代え光を利用する光電融合技術による電力消費量の削減も予想される。 そんな予測はあるものの、データーセンターの電力需要量はやはり大きく増加するとの見方が米国では多い。 コンサルタントのマッキンゼーの今年9月のレポートは、30年の中間ケースのデーターセンターの電力需要を約6000億キロワット時(kWh)と予想している。米国の現在の電力需要量約4兆kWhの15%だ。 この電力需要量の増加を賄うためには、発電設備の新設が必要だ。発電設備からの距離によっては送電網の増強も必要になるが、送電網の増強には時間が掛かる。 問題を解決する方法の一つは、マイクロソフト、アマゾン、グーグルが相次いで発表したように原子力発電所の近くにデーターセンターを立地し、最短距離の送電にすることだ。 マイクロソフトは、閉鎖されたスリーマイル島原発1号機の再開による電力供給を20年間受ける計画だが、アマゾンなどは建設期間が短いと考えられる小型モジュール炉(SMR)をデーターセンターの隣接地に新設し、早期の電力供給を実現する計画だ。発表されている計画地は図-2の通りだ。 マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が創業し会長を務める原子力スタートアップ企業のテラパワーは、今年6月米国50州の中で人口が最小のワイオミング州で最大出力50万kWのSMRを着工した。30年の完成時の供給先は今後建設されるデーターセンターの可能性がある。