「ただの乗り物じゃなかった…」歴代ドラクエ「空飛ぶ伝説の生物」が生み出す「謎」と「ロマン」
■答えがないからこそ語り継がれてきたロマン「黄金の竜」
続いては、『ドラゴンクエストVI 幻の大地』のスーパーファミコン版パッケージで主人公たちを背に乗せている姿が印象的な「黄金の竜」だ。 本編ではゲーム開始直後、ミレーユがオカリナを吹くと現れてムドーの城まで運んでくれるのだが、以降特別な言及がないため、その存在は謎に包まれたまま。それゆえ、実態については多くの考察がされているが、なかでも「黄金の竜=バーバラ」というのが有名かもしれない。 大魔女の血を引くバーバラは強力な魔法使いとして大いに活躍してくれるが、記憶喪失であること、パーティメンバー唯一の夢の世界の住人であること、ルイーダの酒場で待機させられないこと、理由不明のまま一時離脱すること……など、特殊な要素が多いキャラでもある。 バーバラが黄金の竜である説が語られる理由としては、彼女の出身である魔法都市カルベローナにあるだろう。この街の住人は精神と肉体を分離させることができ、その肉体を別の形へと変化させることが可能であるという。そして、「強い魔力を持つバーバラならドラゴンにもなれるのでは……」といった内容の発言をする住人もいるのだ。 加えて、スーパーファミコン版で見られたバーバラと黄金の竜が同じ画面に登場するという、考察を一蹴してしまう“矛盾”も、その後のリメイク版で同じ画面には登場しないようにわざわざ修正されている。 この考察に明確な答えは出ていないものの、1996年の堀井雄二さんへのインタビュー記事内では、バーバラがドラゴンになるという設定が裏にあったことが言及されている。そして同時に、プレイヤーに世界観を想像させる余地を残しているという旨も語られていた。つまり、その説を否定するも肯定するも間違いではないということだ。 プレイヤーごとに異なる視点でその世界を捉え、唯一無二の思い出になりうる『ドラクエ』らしい粋な仕掛けであると言えるだろう。
■冒険の先でまた出会えるかもしれない神鳥「レティス」
続いて、『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』に登場した神鳥「レティス」だ。 かつて七賢者とともに暗黒神・ラプソーンを封印したレティスは、“無数の世界を旅するもの”として語られており、物語終盤では主人公たちを背に乗せて、ともにラプソーンとの決戦に挑んでくれる。 出会った際には主人公たちの力を測るため、いきなり襲いかかってくるのだが、この戦闘がなかなかに厳しい。完全2回行動に加えて中ボスとは思えないほどの高い攻撃力を持っているため、十分なレベルが備わっていないと1ターンで瀕死になる危険性もあるのだ。 さらに、高い守備力に加えて「いてつくはどう」も備えており、テンションアップによる高ダメージも与えにくい。初見プレイだとかなりの苦戦を強いられ、辛酸を舐めたプレイヤーも少なくないだろう。 敵に回すと脅威であるレティスだが、ラプソーン戦ではどんなに激しい攻撃を受けても主人公たちを落とすことはなく、その頼もしい姿には感動してしまう。そして別れのシーンでは、自身が生まれた別の世界ではその名について「ラーミアと呼ばれていた」と、衝撃の事実を明かすのだ。 古参プレイヤーには嬉しいこの粋な演出。今後も『ドラクエ』をプレイしていたら、無数の世界を旅しているレティスにいつかまた会える日がくるかもしれない……。