なぜ『8番出口』フォロワーは増え続けるのか? 制作者も困惑する“多様化”の理由を考察
昨年11月にリリースされて以降、いまなお人気の脱出ホラーゲーム『8番出口』。先月の『東京ゲームショウ2024』でも、「8番出口」を再現し、「おじさん」と写真撮影ができる展示が話題となった。 【画像】続々と現れる「8番ライク」なゲームたち 本作は地下鉄の通路を舞台に、異変がなかったら進み、異変を見つけたら戻るというシンプルなゲームでありながら、ホラー演出や異変を見逃すと最初に戻されてしまうことから、独特の緊張感を楽しめる作品。そうしたゲーム性から、SNSや配信などで盛り上がりを見せ、配信を視聴してもなお、自分でもプレイしたくなるゲームとして広い人気を獲得した。 そんな『8番出口』は当然ゲーム開発者にも注目され、現在では多くの「8番ライク」ゲームがリリースされている。(中にはほとんど本家のコピー作品といっていいものもあるが)、ホラー要素が強めの『新幹線 0号』や、「怪異」をカメラで撮影することで脱出を図る『偽夢』など、閉鎖空間での間違い探し・ループ性・ホラー要素といった「8番出口」の影響を受けつつも、それを発展させた作品が次々にリリースされている。 こうしたフォロワー作品が続々とリリースされる現状に対し、『8番出口』の制作者であるコタケ氏は昨年、「既存の物の新しい組み合わせ」で新しいゲームが生まれると思っているので、全く同じ場所やシステムでない限り開発者としては全然OKです」としているが、最近ではあまりの困惑することもあるようだ。 コタケ氏を困惑させているのは、多種多様なバリエーションの作品たちだと思われる。例えば、今年5月にリリースされた『大江戸しぐさ』は「ジャパンじゃないと思ったら、引き返す」という奇抜なルールで話題になった。9月にリリースされた『異変麻雀』は、永遠に続く奇妙な麻雀から脱出を目指すゲームで、クリアするためには麻雀への理解が必要となる。ほかにも、10月にリリースされた『狐のかえり道』は狐巫女によるセクシーな要素を含んでいたり、DLSite上で公開されているようなR18のゲームにも「8番ライク」の作品が多く存在している。 ■「ライク」が増え続ける「懐の深さ」 インディー・メジャー問わず、流行ったタイトルのフォロワー作品が次々にリリースされるのは珍しいことではない。特にインディーゲームのシンプルな作品は、制作費用が少なく、小規模なインディー開発者でもチャレンジしやすいことや、本家となるゲームがシンプルであるがゆえに、開発者のアイデアをのせやすいことから、ヒットをきっかけに開発者の創意工夫が活かされた「ライク」作品が生み出されやすい。実際、『Vampire Survivors』や、『Slay the Spire』といったタイトルはヒットに伴って多くの類似作品も生み出している。 『8番出口』はこうした部分がより強く表れているタイトルで、「異変を見つける」という間違い探し的なルールや、失敗するとループしてしまう緊張感といったゲームの面白さの誰にでも伝わりやすいシンプルさから、制作者のアイデアを上乗せしやすく、ステージやキャラクターといったグラフィック・デザイン面での負担の少なさといったことが「8番ライク」ゲームが増え続けている要因だと考えられる。 そのシンプルさゆえに、ホラーテイストのものに始まり、麻雀やR18コンテンツまで幅広く受け入れてしまう懐の深さは、逆説的に『8番出口』の魅力を表しているのではないだろうか。 ■今後にも期待したい「8番ライク」 本家の基盤としての優秀さから、クリエイティブな発想によって次々に作品が生まれることは間違いないジャンルなので、「8番ライク」の中から、より独創的なタイトルが生まれることに期待したい。異変に相当する部分の演出をよりホラーテイストにしたものや、物語性を重視したもの、ほかのゲームジャンルとセットになったものなど、開発者のアイデアを存分に活かした作品を楽しみにしている。また、すでに本家がVRに対応していることもあって、VR作品にも期待ができるし、ゲームの一部分=ミニゲーム的な表現として「8番ライク」が登場することもあるだろう。 筆者個人としては「8番ライク」の良さは何度も・短時間でプレイできるミニマムさにもあり、要素が増えすぎるとバランスが悪くなってしまう恐れがあるように思える。コタケ氏の言うとおり「既存の物の新しい組み合わせ」から、この点を乗り越えるような、もしくはミニマムでありながら出来のいい作品の登場に期待している。 なお、コタケクリエイトは新作「Strange Shadow」を開発中。こちらは宇宙を舞台に様々なアクションを駆使し、巨大生物から逃げたり隠れたりするアドベンチャーゲームになるとのこと。『8番出口』とはまた違った感触のゲームではあるが、こちらにも注目だ。
堀江くらは