アントニオ猪木さんが呼び寄せた〝超獣〟ブルーザー・ブロディ&ダスティ・ローデスの「お宝」
【取材の裏側 現場ノート】プロレス界の大黒柱だったアントニオ猪木さんが死去してから早くも2年余りがたつ。猪木さんのライセンスを管理する「猪木元気工場(IGF)」では、この間に「燃える闘魂 アントニオ猪木展」を開き、故人のレガシーを伝えてきた。 2024年の猪木展は横浜、福岡、熊本、東京、札幌、八戸、仙台で開催。IGFの宇田川強エグゼクティブディレクターは「とにかくみなさんの熱量がすごかった。たくさんのお客さんに来ていただいた」と衰えぬ〝燃える闘魂〟の人気ぶりを振り返る。 まさかの展開もあった。宇田川氏によると、6月に京王百貨店新宿店で開催した「超・猪木展」には新宿にあるスナックのママさんが訪れた。そのスナックは猪木さんのライバル〝超獣〟ブルーザー・ブロディ(故人)の行きつけだった。1985年12月、新日本プロレス「IWGPタッグリーグ戦」に参戦していたブロディは「契約トラブル」で相棒のジミー・スヌーカとともに最終戦の仙台大会を突如ボイコット。大騒動になった。東京に戻った2人は「夜の新宿の町に消え、再び密談」と報じられたが、この会談場所がママさんのスナックだったという。 店には新日本の関係者から何度も問い合わせの電話があったというが、ブロディはスナックに記念の品を残していた。「ママさんは『価値がわからないので』ということで、その記念品を持ってきてくださった」(宇田川氏)。昭和プロレス史の意外な〝お宝発見〟につながったというのだ。 超・猪木展には同じく猪木さんのライバルで米WWE殿堂者の故ダスティ・ローデスさんのガウンが展示されたが、WWEからIGFに「引き取りたい」と連絡があった。ガウンのオーナーとWWEの間に入ったところ、7月の日本ツアーのリング上で、息子の統一WWE王者コーディ・ローデスが、亡き父のガウンを羽織るというメモリアルなシーンも実現した。 宇田川氏は「鑑定して値段をつけることはできないが、こちらでプロレスの貴重な品を展示することはできる。世代が代わって捨てられるよりは、各地でお預かりして展示したほうがいい。大事なことだと思うし、そういう役目もあるんだなと思う」。25年の猪木展は、全国15か所以上で開催を予定している。(プロレス担当・初山潤一)
初山潤一