「私どもの不始末を…」キングメーカー・田中角栄元首相は深々と頭を下げた 行政改革が2010年以降、下火になった事情とは
トップのぶれない姿勢で言えば、まだ人々の記憶に新しい郵政改革も同様だ。 小泉純一郎首相(当時)は、同じ自民党内の反対派を「抵抗勢力」に仕立て上げ、世論を味方に対立をあおって改革を進めた。その手法は「小泉劇場」と注目され、圧倒的な支持を集めた。「改革の本丸」と位置付けた郵政改革を突破口に「官から民へ」の流れが加速した。ただ、民営化ではさまざまなひずみも露呈した。いまもその禍根は続いている。 ▽「行革イコール効率化」ではない 道路公団改革を手がけ、特殊法人や独立行政法人改革を巡る政府審議会委員を数多く務めた公認会計士の樫谷隆夫氏は、郵政民営化の議論当時にも共通する社会の「空気」を感じた。 「道路公団も郵政も民営化すればなんとかなる、民営化は全て善だという雰囲気があった。郵政はひずみが生じ、独立行政法人改革も正しいと思って進めたつもりだったが、数を減らすことを意識するあまり、ほとんど関係のないような組織を統合したようなものもある。何か違っていた」
矢継ぎ早に進んだ民営化の議論は正しかったのか。「行革イコール効率化、スリム化だと思われているためかもしれない。だが、それは本来の行政改革ではない。目的は組織のミッションを達成すること。そのためのガバナンス・マネジメントが十分に機能する組織形態とすることが本質だ」と言い切る。 樫谷氏は、衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングなどさまざまな企業の支援や再生を手がけた経験があるだけに、その言葉は重い。 行革に対する評価がほとんどなされていない点も問題視する。「『行政は正しいことしかしないから、チェックする必要はない』という発想があるのかもしれない。だがそれでは次の改革に進まない。利益追求が目的の企業とは違い、行政改革は政策の達成、つまり国民へのサービス向上を最終目的にするべきだ」 ▽官僚のキャリア制度改革で忖度政治横行 政界は、幹部となるキャリアを頂点とした公務員制度も行政改革のターゲットにした。学生の国家公務員離れが懸念され、ブラックな労働環境の改善へ検討は進んだ一方で、行革によって「政」と「官」の関係性に疑問符が付けられるようにもなった。