【2024年10月】社会保険適用拡大で新たに気を付けたい「週20時間の壁」とは
扶養内に留まるなら「週20時間の壁」を意識する
パートやアルバイトなど短時間労働者の時給は雇用契約によって定められており、頻繁に変わることはないと思うので、扶養内で働きたい場合は、所定労働時間を気にする必要があります。つまり「週20時間の壁」を意識しなければなりません。 所定労働時間が週20時間で月額8万8000円となる時給は約1015円です。東京都の「地域別最低賃金」は1113円(2023年10月1日発効)なので、東京で働いている人の多くはこの時給を超えていることになります。 つまり、週20時間以上働けば、大抵は月額8万8000円以上も満たすことになるので、労働時間をより気にした方がいいというわけです。別の見方をすれば、時給2000円の人が月間44時間働くと、月額8万8000円になりますが、週にすると10時間か11時間なので、所定労働時間の要件を満たさず、社会保険の適用とはなりません。
労働時間を調整する場合の注意点
所定労働時間には、前出のとおり、残業などの臨時で発生した労働時間は含みません。そのため、残業によって20時間を超えても、所定労働時間が20時間未満であれば、適用要件には該当しないことになります。しかし、例外的に残業などで実労働時間(※)が2か月連続で週20時間以上となり、引き続き20時間以上の状態が続くと見込まれる場合には、3か月目から労働時間の要件を満たすことになり、そのほかの要件も満たしていれば、社会保険に加入する義務が発生します。 ※実労働時間とは、休憩時間を除く労働者が実際に労働した時間。使用者の指揮命令に従い実際に労働している時間であり、残業などの所定外労働時間も含みます。 つまり、単発的な残業であれば問題ありませんが、残業が継続している場合は、それを含めて20時間以上と見なされる可能性があるので、扶養内に留まりたい場合は注意が必要です。
社会保険加入のメリット
ここまで、扶養内に留まるための「壁」についての話が中心でしたが、壁を超えて、社会保険に加入した場合に得られるメリットもお伝えすべきでしょう。社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入すると、以下のメリットがあります。 ・年金が増える(厚生年金が受給できる) ・障害年金・遺族年金が充実する ・傷病手当金・出産手当金が受け取れる ただし、壁を少し超えたくらいの年収では、手取りが減るデメリットの方が大きく感じるでしょう。そのため、社会保険に加入したなら制限を設けずに働くのがベストです。それを求めないのであれば、扶養内に留まる選択となるのが現状のようです。 しかし、「バリバリ働く」か「ちょっと働く」の2択では、収入の格差が広がるばかりです。そこで、壁を超えて、徐々に労働時間を増やしていくようにすれば、いきなりフルタイムで働くよりは負担が少ないのではないでしょうか。 何より、収入が徐々に増えて家計が改善されていく過程は、扶養内で働き続けているケースでは得られない喜びです。壁を意識しない働き方によってキャリアアップが可能なことも大きなメリットとなるでしょう。
参考資料
・厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト」 ・日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」 ・政府広報オンライン「社会保険の適用が段階的に拡大! 従業員数51人以上の企業は要チェック」 ・厚生労働省「あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度」 ・日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険 ・厚生年金保険の適用拡大 Q&A集」
石倉 博子