億万長者の米国選手たちがライダー杯の分配金にこだわるのはなぜ? 欧州マキロイは「40万ドルが必要な選手は一人もいないはず」
「ライダーカップの収益は一体どこへ行っているんだ?」
「愛と名誉のために戦えますか?」――そんな問いかけが、米欧そして世界のゴルフ界から聞こえてきている。 【写真】バレたら“永久追放”!? これがマスターズで“持ち込み厳禁”の品目です 米国チームと世界選抜チームの対抗戦、プレジデンツカップでは、これまで寄付を前提とした給付金15万ドルが支払われ、2022年大会からは25万ドルに引き上げられた。
そして今年9月に開催された24年大会では、その25万ドルの給付金から「寄付が前提」という条件がいつの間にか取り払われ、実質的に賞金化していたことが判明。ゴルフ界は大いに驚かされた。 そして、その事実が今後は米国チームと欧州チームの対抗戦、ライダーカップにも影響を及ぼすのではないかと見られていたのだが、案の定、米国開催となる25年ライダーカップでは、出場選手に40万ドルが支払われる見込みであることを英テレグラフ紙が報じ、ゴルフ界を騒然とさせている。 その40万ドルを「賞金」と呼ぶべきか、「出場料」あるいは「アピアランスフィー」と呼ぶべきかは不明だが、どんな呼称になるにせよ、支払われるのは米国チームのみである。以前から「お金はいらない」「もらうべきではない」というスタンスを取り続けている欧州チームは、今後もその姿勢を維持すると見られている。 1927年から始まったライダーカップは、創設当初から「国と大陸の名誉とプライドを懸けて戦う対抗戦」とうたわれ、賞金が支払われない「ノーマネーの大会」「無償の大会」であることは、ライダーカップの本質であり、アピールポイントでもあった。 しかし、99年の全英オープンの際に、当時のスター選手だったマーク・オメーラとペイン・スチュワートが「僕たちがプレーすることで得られているライダーカップの収益は一体どこへ行っているんだ? 僕たち選手は5000ドルの経費以上を受け取って然るべきだ」と初めて公の場で主張し、大会主催者であるPGA・オブ・アメリカに抗議したことは、言うまでもなく、大いなる物議を醸した。 そして翌年、タイガー・ウッズが「選手は20万ドル、30万ドル、40万ドルをもらうべき。受け取った選手は、そのお金を適切に使うべき。ちなみに僕は全額寄付する」と語り、オメーラらの主張を後押しした。 以後、米国チームには寄付を前提としてチャリティー給付金が支払われるようになり、選手たちが自分が選んだ団体へ寄付することが慣例化した。昨年大会では米国チームの各選手に20万ドルのチャリティー給付金が支払われた。 しかし、それでもなお不満ということなのだろう。2023年大会では、米国チームメンバーのパトリック・カントレーが、かつてのオメーラやスチュワート同様、「ライダーカップの莫大収益は一体どこへ行っている?」という抗議の意を込めて、米国チームのユニフォームの一つである帽子の着用を拒否。終始、ノーハットでプレーした。 そして、ノーハットのカントレーのマッチを応援していた米国チームの面々が、カントレーに合わせて、みな自身のキャップを取り、手に持って振り始めたところ、米国チームを応援していたギャラリーも一斉に真似をした。突如、会場に起こった帽子によるウエーブ(波)が、欧州チームの選手たちの集中力を阻害することになり、大騒動へ発展。 それが、後に「ハットゲート事件」と名付けられた後味の悪い出来事だった。キャップを振った米国チームの面々の中には、カントレーがノーハットでプレーしている意味を知らず、「ただ、その場のノリで、みんなに合わせてキャップを振った」と明かした選手もおり、ハットゲート事件そのものが大会主催者への抗議だったわけではなかったが、そんな騒動を経た末に勝敗は欧州チームの圧勝となり、米国側の後味は一層悪いものになった。