「ショウヘイの犬ならそんなに驚くことじゃない」…デコピン始球式に球団関係者が感動したワケ
米大リーグ(MLB)・ドジャースの大谷翔平選手の取材にエンゼルスへの移籍前から熱心に取り組み、地元紙ならではの肉薄した視点で精緻に報道し続けてきたのが、アメリカ最大の日刊紙・Los Angeles Times(ロサンゼルス・タイムズ)。 【写真】大谷翔平がメジャーに行く前に「熟読していた文庫本」、その「本の名前」 日本でも大きな話題になった大谷の愛犬デコピンには、L.A. Timesもやはり目をつけていた。 大谷の100点を超える写真と13万字以上の詳述で大谷の全軌跡を記した『L.A. TIMES』公式独占本『OHTANI’S JOURNEY 大谷翔平 世界一への全軌跡』(L.A. Times編/サンマーク出版刊)。本書からその一部をお届けする。
愛犬デコピンもショーの主役に。「デコピンの始球式」
(ジャック・ハリス 2024年8月28日) 大谷翔平が話題をさらったのは、その日の夜が初めてではない。しかし、愛犬からスポットライトを奪い返さなければならなかったのは初めてだ。 その日は、大谷がデコピン(アメリカンネームは「デコイ」)を抱くボブルヘッド人形が入場者に配布されるボブルヘッドデーで、ドジャー・スタジアムの外には朝8時から長蛇の列ができた。 ドジャースがボルティモア・オリオールズに6対4で勝利したこの試合、飼い主とペットの双方が素晴らしいショーの主役となった。 まず観衆の大歓声をさらったのはデコピンの「始球式」だ。大谷にマウンドまで連れていかれたデコピンは口にボールをくわえ、ホームベースの後ろで捕手のようにしゃがむ大谷めがけてまっすぐ走った。 この可愛らしい始球式の後、オリオールズとのシーソーゲームを勝利に導いたのは大谷だった。4打数2安打、1本塁打(42号)、2盗塁(42盗塁)、3打点の活躍を見せた。 デーブ・ロバーツ監督は語る。「本当に、彼は大事な瞬間に底力を発揮するんだ」 大谷は1回に先頭打者ホームランで先制点をもたらす。4点を奪った3回も塁上を賑わせた。ヒットで出塁し、テオスカー・ヘルナンデスの逆転スリーランにつなげた。 さらに5回には、ほぼ1人でドジャースに中押し点をもたらす。ファーストライナーをオリオールズのライアン・オハーンがグラブに収めきれず一塁に残った大谷は、盗塁とワイルドピッチで三塁まで進塁。2アウトのときに起こったエラーで生還し、点差を2点に拡げた。 「とても特別な夜でした」大谷は通訳を介してコメントした。 8月前半の2週間はスランプに陥り、8月2~19日の打率は.181(ただしホームランは7本)に沈んでいた。しかし月末にはナ・リーグMVPの有力候補らしく大活躍で締めくくった。 「デコピン始球式の日」は過去7戦でマルチヒットを放った5度目の試合、また本塁打と盗塁の両方を決めた今季10度目の試合となった。7回の最終打席こそ三振に終わったが、いつも以上に大谷目当てで詰めかけた満員の観客5万3290人から「MVP」コールが沸き起こった。