Marketing Briefing[日本版]: 「血で汚れた」ソーシャルメディア、マーケターはどこまで利用すべきなのか
1月末、ソーシャルメディアプラットフォーム大手5社のCEOらに対して、米上院議員リンゼー・グラム氏が公聴会で言い放った言葉は大きな反響を呼んだ。「あなた方の手は血で汚れており、あなた方の製品は人々を殺している」。 この米議会公聴会は「ビッグテックとオンライン児童性的搾取問題(Big Tech and the Online Child Sexual Exploitation Crisis)」と題され、若者への悪影響に対する安全性が不足していることを米議員らが大手SNSに訴えたものだった。 一方で、コミュニュケーション、あるいは広告プラットフォームとしての場と考えても、その安全性は不安視されている。ディープフェイクの広がりも顕著となっており、その対策にも注目が集まっている状況だ。 プラットフォーム上の安全性は、まさに容易ならざる状況といえる。ただし、ソーシャルメディアが社会への圧倒的な影響力を持ってしまった現在、マーケターとしてそれを使わない手はない。各プラットフォームの特性を正しく見分け、正しい使い方をすることが求められている。
圧倒的な盛り上がりと顕在化するリスク
イーロン・マスク氏のXは、依然として圧倒的なコミュニケーションの場──インプレッション稼ぎの存在や誤情報の拡散を棚に置くとするとならば──となっている。とくにスポーツ関連のイベント中におけるリアルタイムな会話の量が、ほかのソーシャルメディアプラットフォームを圧倒しており、セカンドスクリーンのトップともいえる。 実際、2月11日に米国で開催された第58回スーパーボウルでは、1920万ポスト(ユニークユーザーポストは480万)もの関連ポストがユーザーによって量産され、インプレッションは105億、動画視聴は11億回という記録を作り、デジタル上での圧倒的な盛り上がりをみせた。 広告エージェンシーであるワークインプログレス(WorkInProgress)の共同創業者でチーフクリエイティブオフィサーのマット・タルボット氏は、「Xはいまだセカンドスクリーンのトップの座にある。理由は単純に、ライブイベント中のリアルタイムな会話の規模では、他の追随を許さないことにある。スポーツにおいては、特にそうだ」と話す。 マーケターにとって、この規模のリーチは非常に魅力的なものだろう。スーパーボウルは米国での出来事だが、Xの利用時間が世界1位である日本なら、スポーツをはじめとする文化的なモーメントで同様の盛り上がりを期待できる。ただし、前述したリスクが依然として解決していないことを、マーケターは考えなければいけない。攻め続けるのか、守るのか。広告出稿中であるのならなおさら、決断を迫られている。