公設試験研究機関が民間企業を支援

　民間企業の研究開発を支援したのが、国立および府立・市立の公設試験研究機関であった。 1903年設立の大阪府立工業試験場が18年に農商務省所管大阪工業試験所となり、16年に市立大阪工業研究所（21年に大阪市立工業研究所と改称）、25年に大阪府立産業能率研究所、29年に大阪府立工業奨励館が設立されたため、大阪では国立・府立・市立の試験研究機関がそれぞれ独自の活動を展開しながら、競争と協調の関係を維持しつつ、研究開発ネットワークを構築していた。さらに1890年に大阪府立商品陳列館（30年に大阪府立貿易館と改称）が設立され、大阪製品の輸出を支援した。 　大阪市立工業研究所では1921年度からアメリカのピッツバーグのメロン工業研究所（Mellon Institute of Industrial Research）にならって、依頼者が研究費を提供する特別研究制度が開始された。また大阪府立産業能率研究所は産業能率、科学的管理法の普及に関する全国初の公設試験研究機関として、「工場診断」をはじめとするユニークな活動を展開した。 ---------- 沢井実（日本経済史、日本経営史） 1978年国際基督教大学教養学部卒業、1983年東京大学大学院経済学研究科第二種博士課程単位取得退学、1998年大阪大学博士（経済学）取得 東京大学社会科学研究所助手、北星学園大学経済学部専任講師、北星学園大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授、マールブルグ大学Japan-Zentrum客員教授、EHESS（パリ）客員教授、大阪大学大学院経済学研究科教授、2016年から南山大学経営学部教授 主な著作物：『近代日本の研究開発体制』（2012年、名古屋大学出版会）、『近代大阪の産業発展』（2013年、有斐閣）、『マザーマシンの夢』（2013年、名古屋大学出版会）、Economic Activities Under the Japanese Colonial Empire, 2016, Springer Nature（編著）、『日本の技能形成』（2016年、名古屋大学出版会）、『見えない産業』（2017年、名古屋大学出版会）