「クマが来るから柿の木を切って」近所からの要望、無視して被害があったら賠償請求される?
●地域住民が助け合いながら対策を
――もしも、果樹や草木を放置してクマが出没して、隣人に被害があった場合、賠償請求される可能性はあるのでしょうか。 結論からいうとその可能性はありうると考えられます。 例えば、近接した時期にクマの目撃情報が何度かあり、近隣の住民から再三に渡り草刈りや果樹の対策をとるよう求められていたにもかかわらず、これを放置していた場合には、先にあげた注意義務に違反すると評価されることもありうるということになります。 そのため、不法行為(民法709条)の賠償責任を負うこととなり、治療費等の損害をクマ被害に遭った隣人に支払う必要が生じうると考えられます。 ――クマとどう共存していくか、個々人の力で解決することは難しいかもしれませんが、解決に向けて私たちにはどういうことが求められているのでしょうか。 最近は高齢化に伴い、果樹や雑草の管理が個人では行き届かないことも少なくないと思われます。 そういう場合には、町内会を中心とした地域住民全体で助け合いながら、草刈りや果樹の管理(伐採や実の採取)をするのが望ましいでしょう。伐採の費用を補助してくれる自治体もあります。 出没したら殺せばいいというのは非常に短絡的な考え方です。クマが人里に現れずに済む対策を人間側が取る必要があります。 【プロフィール】 寺林 智栄(てらばやし ともえ)弁護士 2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。 事務所名 : NTS総合弁護士法人札幌事務所 事務所URL:http://nts-law.jp