悔しさの中にある、ほどよい充実感。29歳になったモナコ南野拓実から心境の変化を感じ取った【現地発】
当時に感じられたのは凄みを感じるほどの緊張感
今回の取材で強く感じたのは、南野の変化だった。心境に変化が見えたと言ってもいい。 2020~22年までプレミアリーグの強豪リバプールに在籍した南野。筆者も、記者として南野を追いかけイングランドを飛び回った一人。しかし20年1月に入団すると、その約2か月半後には新型コロナウイルスの感染拡大で英国全土がロックダウンとなり、取材規制で選手と話すことができなくなった。そのためプレミアリーグにおける南野の取材は、非常に限られたものだった。 当時、取材を通して南野から感じ取っていたのは、凄みを感じるほどの緊張感だった。もちろん、質疑応答に真摯に応じてくれる。質問に対して一つひとつ丁寧に答えてくれるその姿勢は、他の選手たちとまったく変わらない。 ただ彼からは「リバプールで何かを成し遂げなければ」とでもいうような、強い覚悟が伝わってきた。インタビューにも張り詰めた空気が漂い、こちらもいつも以上に気を引き締めて取材に臨んでいたことを思い出す。 振り返れば、当時の南野は、ロベルト・フィルミーノやモハメド・サラー、サディオ・マネといったワールドクラスのアタッカーとポジションを争う立場にあった。この壁をどうやって打ち破るか。もっと上へ、もっとゴールを。南野が自分に言い聞かせながら、日々を送っていたのは容易に想像がつく。 だがリバプールを離れた22年から月日が流れ、南野は肩の力がほどよく抜け、記者が身構えるほどの緊張感はなくなっていた。もちろん、敗戦に「悔しい」と漏らしたように勝利への執念は変わらない。「チャンスを仕留め切れなかった」と反省を口にするあたりも、リバプール在籍時のままだ。 しかし、南野の心の持ちように違いが見えた。リバプール加入時に24歳だった彼が、5年分の経験を積んだからなのか。あるいは、本人が「モナコは若い」と語るように、チームを引っ張る立場になったからなのか。モナコ広報が認めた約4分20秒の限られた取材時間では、その理由はハッキリと分からなかったが、リバプール在籍時に比べると、29歳になったアタッカーから心境の変化を感じ取った。 記者団から質問が飛ぶ。「CLなどヨーロッパの大会は、色々な国のチームと対戦する。プレミア上位クラブとの試合は、少し特別ではないですか?」と。南野は答える。 「そうですね。シンプルに強いなと。交代で入ってくる選手たちも、しっかり良い選手たちが出てくる。その意味では、やっぱりやっていて楽しいですね」 (記者:リバプール在籍中、アーセナルとは対戦経験があります。モナコと違いは感じましたか?) 「(モナコに比べて)選手層の厚さは全然違うかなと。あとは、全体的に相手の方が格上ですし。やっぱりプレミアリーグは世界トップだと思う。そこで揉まれてる選手たちですから。でもサッカーというのは、1試合の勝負で、勝てるチャンスがあったりする。そこを狙ってました。でも今日は、相手にやられたという感じです」 悔しさの中にある、ほどよい充実感。南野は、昨シーズンのモナコ年間MVPに選ばれた。その活躍している理由が、ほんの少しばかり見えた気がした。 取材・文●田嶋コウスケ
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