それぞれの想いを胸に ''富士東旋風''の再現を狙う
10月5日、第103回全国高校サッカー選手権静岡予選の1次トーナメント2回戦が行われ、富士東が桐陽を2-1で破り3回戦進出を決めた。 【フォトギャラリー】富士東 vs 桐陽 令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)静岡予選では40年ぶりの8強入りを果たした富士東。準々決勝では0-3と聖隷クリストファーに敗れたものの、2回戦で優勝候補の一角だった藤枝明誠、3回戦で袋井と上位カテゴリー校を撃破し旋風を巻き起こした。いやが応でも今大会注目を浴びる存在だが、他の進学校同様に富士東も半年後の受験を控え、インターハイ予選を最後に引退する3年生は多く、今大会は新たなチーム構成で臨んでいる。 増田裕監督から『ピッチ内のもう一人の監督』と絶大な信頼を受けるキャプテンの冨永悠太は、「最初はほんとにみんな抜けちゃった時にチーム状況が全然安定しなかった。全員で守るとかもできないし、チームプレーができなかったのですが、夏を通して合宿とかでみんながひとつになれた」とここまでの道のりを振り返る。初戦で伊豆中央を相手に13-0と大量得点差で勝ち上がった富士東だったが、2回戦のこの日は立ち上がりから積極的に前へとでてくる桐陽の勢いに苦しむ。 「守る時間帯が多くなるのは仕方ないから、そこから攻撃のところを速くとか、切り替えのところを速くしようっていうのもずっと夏から続けていたのが出せて良かったです」 冨永を中心に若いチームは徐々に立て直しを図り、37分、カウンターを機に1年生FW11花井晃太朗のパスから相手DFの裏に抜け出した攻撃の大黒柱の3年生MF8坂部加遥が、GKの頭上を狙ったループシュートで先制する。 「FWの花井が良いパスを出してくれたので、それでキーパーが前に出てくるのが見えたので、あとは頭の上をループで浮かすだけでした」(坂部) 「カウンターで取ったのが大きかったですね。やっぱりエース。3年生がしっかり決めてくれて、それでみんな勇気もらえました」と、ベンチで戦況を見守っていた増田監督にとっても溜飲が下がる一発だった。 これで勢いに乗った富士東は、68分にも自陣からのロングフィードを花井が繋ぎ、最後は坂部がGKとの1対1を制し追加点を挙げる。 「練習でも取ってから全員が駆けれるように監督からいつもオーバーラップとか、どんどん攻撃の枚数を増やして相手に襲いかかるように言われているので、そこが浸透していると思います」(冨永) 「先制点はロングフィードにディフェンダーの頭上を超えるのが軌道で分かって『(花井も)なんか競り勝つな』ってわかったのでそれに抜け出しました。2点目もキーパーが飛び出すのが見えたので、 あとは転がして流し込んだだけです」(坂部) 終盤の78分に横パスを拐われ、失点を許したものの富士東は、増田監督もその決定力に太鼓判を押す坂部の冷静な2得点で勝利をものにした。 「僕はインターハイで前十字靭帯を切ってしまって、一回は引退を考えてたのですがチームのみんなやトレーナーの方と監督、コーチ陣がサポートしてくださって、こうやって復帰することができて、 その思いも背負って選手権に臨んでるので、人一倍気持ちが強いです」。そう話す坂部の右手には背番号『7』DF井出佑斗のユニフォームがあった。「今日は受験で出られなかったので。負けられませんでした」と、はにかみながらも仲間への思いを口にするとユニフォームと共にイレブンが待つ歓喜の輪に飛び込んでいった。 迎える3回戦の相手は伝統校の清水東だ。「トーナメントなので、一戦必勝の気持ちで粘り強く戦いたい。清水東が粘れ、走れが哲学なので、それを上回るだけの粘りと、そして運動量で清水東に挑戦したいです。何とかもう一回。もう一回(インハイ予選の様に)行きたいです」 それぞれの想いを胸に、新しい富士東が旋風を再現する。 (文・写真=西山和広)