ソフトB“熱男”松田宣浩が異色キャンプ決意「打撃練習の柵超え本数を数える必要ない」
究極の目標は2000試合、2000本安打、300本塁打
数字が持つ魔力に悩まされた。 「数字の余裕は、心の余裕につながる。いい当たりが正面をつき、逆に間に落ちるようなラッキーなヒットが少なくて打率の数字が伸びずにのっていけなかった。技術の問題じゃない」 スコアボードに「打率1割」と出る度に焦りが出る。特に気持ちで乗っていくタイプの松田には、それが堪えた。クライマックスシリーズ、日本シリーズでもフルでスタメンに名を連ねることができなかった。 「短期なんで調子のいい選手を使うのは当然だと思う」 チーム方針は理解したが、「割り切れないのが本音だった」 それでもベンチの最前列に座り“熱男”としてベンチを盛り上げた。 「僕がもっと若かったら、腐って“なんで外されるの?”“どうでもええわ”と拗ねていたでしょう。でも35歳。周りの選手に“松田さんって出れるときだけ元気を出して、出れないと腐るんだ”と見られる。僕のチームへの影響力はわかっている。これまで教えてもらったことの見せどころだと思った」 それがチームリーダーのせめてものプライドだった。 8月に打率.371をマークして盛り返すが、終わってみれば、打率.248。ルーキーイヤー以来となるワーストである。4年連続全試合出場を果たし32本塁打は西武の浅村栄斗と並ぶリーグ3位タイ、82打点も西武の秋山翔吾と並ぶ7位タイの数字で、6年連続ゴールデングラブ賞に初のベストナインも獲得したが、打率の不振をメディアにも叩かれた。 意外性と、打ち出したら止まらない勢いが、松田の持ち味だが、率を追うことも重要だと実感した。 「ヒット数で言えば10本ほどの違いなんだけど。それで打率が2分違う。いかに1本が大事か。そうなると、打てるゾーンを広げる必要がある。それとスタートダッシュ」 それがキャンプでの柵越え封印に取り組む理由になった。 「でも2018年の良かったところはスタメン落ちしたこと。もし悪いなりに試合にずっと出してもらっていたら、ぬるく今年をスタートしたかもしれない。でも、オフから“今年はああいう状況にしたくない”という思いでやってきた。あの経験がプロ14年目以降に生きたね。そう思えるようなシーズンにしたい」 背番号を2016年までつけていた「5」に戻した。 「ルーキーの頃のようにボールを追う気持ちを持ちたかった。気持ちをリセットしモチベーションをあげたかった。5は2年間、空いていたから。でも、球団もまさかと、びっくりしていた」 進化をテーマに挑むプロ14年目のシーズン。目標は「キャリアハイ」である。 これまでのキャリアハイは、打率が2014年の.301、本塁打、打点は、2015年の35本、94打点である。それを果たせば最大の目標であるリーグ優勝奪回に貢献することになる。 「リーグ優勝があってのプロ野球。1年間、143試合で結果を出した選手が評価されるのがプロ。V奪回の条件は、みんなで力をあわせること。戦力はあると思う。プロ野球は大きな負荷がかかるスポーツで、誰もがストレスを抱えながら戦ってきている。そのツケが積もりに積もって昨年は故障者が多く出た。今年は、そこにチームとしても打ち勝って優勝を取り戻したい」 加えて個人記録で言えば通算安打も1500本にあと1本。通算本塁打も250本にあと6本と迫っている。 「究極の目標は、その先の2000試合、2000本安打、300本塁打。ギリギリできない数字じゃない。頭のてっぺんに置いていい数字。その達成のためにコツコツやる。この1、2年が野球選手として大事だと思っている」 年間140安打ペースを守れれば、4年で達成できる。そのとき松田は39歳。昨年、ロッテの福浦和也は、42歳で通算2000本安打を達成した。選手寿命が延びている昨今の野球界の流れと、松田の進化への努力を考えると、不可能な目標ではないだろう。新たな境地を求めてのリスタート。松田の異色キャンプの成果に注目したい。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)