トランプ氏とゴルフ界 「予測不能」の期待感/小林至博士のゴルフ余聞
米大統領に返り咲きを果たしたドナルド・トランプ氏がゴルフ好きなのはよく知られている。選挙後にも彼のドライバーショットの動画が公開されるや、ゴルフ界も一般社会もざわめいた。動画には、弾道測定器による推定飛距離「247YDS」との表示があった。 【画像】ウッズとトランプ氏 78歳という年齢と、独特すぎるスイングからすると、にわかには信じがたい数字で、実際、「フェイク動画ではないか?」とのコメントも。だが、私はその下半身の挙動からして、ありえるかもしれないと思った。もちろんゴルフの話である。ご存じの通り、トランプさんは下半身にまつわる数々のスキャンダルと訴訟で世間を賑わせてきたが、今回はそちらの話題ではない。 スイング中の下半身は、まるで巨木のようにどっしりと地面に根を張っている。これは強靭(きょうじん)な足腰と柔軟性がなければ不可能だ。「ゴルフの達人」と自称するのも伊達ではない。それでも、多くの人が偽動画ではないかと指摘するのは、ゴルフにまつわるエピソードが虚実入り混じったものだからだ。 例えば、クラブチャンピオンシップで18回優勝したと主張している。しかし、複数の報道によれば、実際には大会が開かれていなかったり、自身は参加していなかったり…。さらに、実際の優勝者を説得して、自分の名前をトロフィーに刻ませたという話まである。 ラウンド中の逸話も伝説的だ。ミスショットをすると、誰よりも早くカートに飛び乗り、ピンそばにボールを置き、「ナイスショットだった」とニンマリしたとか。あるいは、グリーンサイドでチップショットをするフリだけして、実際には手に隠し持ったボールをカップに入れ、「チップインだ!」と声高に宣言したとか。 さらには、どれだけ離れていても2パット目は「OK」になるそうな。このような行動から、彼が誇るUSGAハンディキャップ2.8も、真に受けるべきではないとされる。一方で、トランプ氏とのラウンドは笑いの絶えないエンターテインメントであり、そのユーモアと豪快さに魅せられるとの証言も多々ある。 虚々実々―。何が本当で、何が嘘か分からないが、確実に「何か」をやってくれる期待感がある人物なのだろう。そんなトランプ氏にゴルフ界の期待が高まっている。彼は当選後、PGAツアーとLIVゴルフでスター選手が分断されている現状に対して「ツアーは一つになるべきだ。その取引をまとめるのに15分もかからないだろう」と豪語した。その後、PGAのコミッショナーや、LIVのスポンサーであるサウジアラビアの政府系基金(PIF)のトップとも相次いで会談している。 トランプ氏の行動力がゴルフ界にどのような変化をもたらすのか。その行方を見守りたい。ゴルフ同様、予測不能でありながらも、何かしらのインパクトを与えることは間違いないだろう。(小林至・桜美林大学教授)