感じのいい人が無意識にやっている「人生を好転させる習慣」
私は、彼の批判的なおしゃべりに心底うんざりしていた。いいかげん、このオフィスから蹴り出してやりたい気分だったよ。『批判する人の質問』が、私の頭のなかを乱暴に駆け抜けていった。 『私はこんな男に付き合わされるようなことをしただろうか?』 『いったい自分を何様だと思っているんだ?』 だが、ふと自分がやっていることに気づいて、私は声をあげて笑いだしそうになった。 他人を批判している相手を、私は批判していたんだ。私も彼と同様、『批判する人の考え方』をしていたんだ。私自身が『批判する人』に乗っ取られていたんだよ」 自分自身に起きた話を、ジョゼフはいかにも楽しげに話していた。私はこう尋ねた。 「そこで、『選択の地図』はどんな働きをしたのですか?」 「最初はただ、なにかが変だということに気づくんだ。おそらく、緊張感や動揺、あるいはなんとなくうまくいかないなという感覚だろう。 それは自己観察力にスイッチが入り、意識が鋭敏になっているということだ。身体はもっとにぎやかなサインを送ってくる。頭の反応より先に起こることも多い。 突然、肩が耳のあたりまで上がっているのに気づいたりする。お腹がグーグー鳴りだしたり。そして、自分に問いかける。 『今の自分は批判する人になっていないだろうか?』 答がイエスだったら、また問いかける。 『これが私の望む状態だろうか?』 もちろん、今の話に関しては、答はノーだ。自分が『批判する人』になっているのに、そんな状態でどうやって相手を助けられるというのか。 『批判する人の立場』で人を助けることなどだれにもできない」 『批判する人の立場』で人を助けることなどだれにもできない。
● 「批判する人」をやめる方法 スイッチング・クエスチョン 「それなら損切りをして、さっさと引き上げたほうがよさそうだ」と私は提案してみた。 「とんでもない」とジョゼフが答えた。 「自分が『批判する人』になっていると気づいたら、それこそがコントロールを取り戻し、個人の力を発揮するタイミングなんだ。もちろん『批判する人』であることを認めないといけないが。 『批判する人』の立場で考えるか、『学ぶ人』の立場で考えるかを切り替える選択ができる。 この切り替えの方法を示してくれる特別なタイプの質問がある。 私はそれを『スイッチング・クエスチョン』と呼んでいる。 その日のスイッチング・クエスチョンはこうだ。 『彼についてほかの考え方ができないだろうか?』 『彼はなにを必要としているのだろう?』 その質問のおかげで、彼のことを価値のない人間だと考えたりせず、むしろ彼に興味をもつようになった。 『選択の地図』は、自己観察の全プロセスをシンプルなものにしてくれるんだ。ほかにも多くの選択肢があることに気づき、プレッシャーがかかる状況でも、もっと賢明な選択ができるようになる。 事態がうまくいっているときの選択は容易だ。試されているのは、プレッシャーがかかる状況でなにができるかだ」 ジョゼフの言葉のなにかがきっかけとなって、私は空港での妻との不愉快な時間を思いだしていた。 「衝突が起きるときはいつだって、『批判する人』が現れるような気がします。つまり、結局は両者がともに『批判する人』になってしまう。よくあることではないですか?」 「まさにそうだね。両者とも『批判する人』になってしまうと、すべてがエスカレートして、よい解決策が生まれる可能性は急ブレーキをかけて停止してしまう。そこで、100万ドルの価値があるヒントをきみに教えよう。 『2人の人間が衝突しているときは、自分が批判する人になっていると先に気づいたほうが、事態を好転させられる』」 2人の人間が衝突しているときは、 自分が批判する人になっていると 先に気づいたほうが、事態を好転させられる。 ● 深呼吸と視点転換で争いを解消 身体のサインを察知し冷静に判断 それだ、と思った。グレースはけんかをしたあとでも、一瞬のうちに意地を張るのをやめ、心を開いてくることが多い。彼女のこの切り替え能力のおかげで、いつも大事に至らずにすんでいた。 グレースはこれを無意識にやっているのだろうか、それともなにか秘訣があるのだろうか、と何度も考えたことがある。彼女に尋ねたこともある。彼女はこう返した。