【極悪女王で話題】女子プロレスの壮絶すぎる現場、長与千種が語った「狂犬を作るためのシステム」とは?
その子には内緒で、片八百長の話が決まった。対戦相手は千種だった。 千種は取り決め通りに負け、何も知らない仲間は飛び上がって喜んだ。 ところが試合後、千種はマネージャーの松永国松に呼ばれた。 「何をやった?」 千種の八百長はバレていたのである。千種はしらばっくれたものの、長年女子プロレスを見てきた国松の目はごまかせない。 「お前はプロレスに向いていない。荷物をまとめて田舎に帰れ!」 しかし話をするうちに、国松の口調は諭すようなものに変わっていった。 「孤独に強くなければチャンピオンにはなれない。孤独を知った者でなければ星はつかめない。人を蹴落としてでも這い上がろうとする気持ちがなければ成功しない。ここはそういう世界なんだ。お前が仲良しこよしでやりたいのなら、もう俺は何も言わない」 国松マネージャーの言葉を、千種は深く受け止めた。先輩に叱られても、会社から何を言われても、仲間がいればやっていける。そんな甘えの意識が、自分と同期の仲間たちをダメにしている。そう考えた千種は自ら「仲良しこよし」を離れ、同期の仲間から一定の距離を置いた。
その途端、同期たちの態度が一変した。食事に誘われることもなくなり、会話の輪にも入れなくなった。一緒にリングを掃除することさえ拒否された。 仲間はずれにされた17歳の少女は、歯を食いしばって耐えるほかなかった。 押さえ込みルールの試合でも、千種は負け続けた。 勝敗が出世に直結するのだから、誰もが真剣に押さえ込みを研究する。ずっと後になってから気づいたことだが、当時の千種は押さえ込まれると右にしか逃げられなかった。ある時、同期のひとりがそのことに気づき、情報は瞬時に同期全員に行き渡った。動きを読まれた千種は、連日のように仰向けでスリーカウントを聞く羽目に陥った。 ● ライバル心を掻き立てるフロント 足首粉砕やアバラ骨折に耐える選手たち 全女が選手に求めるのは、女同士のリアルなケンカである。 リング上では激しいケンカを見せるものの、試合が終われば和気藹々。冗談ではない。女にそんな器用なことができるはずがない。リング上で激しい戦いを見せるためには、普段から険悪な人間関係を作っておく必要があるのだ。 そのように考える松永兄弟は、選手たちの精神状態をコントロールして、常に関係を悪化させる方向へと誘導していく。