能登の被災地「もはや限界集落」 介護事業所どう守る? 識者に聞く
1月1日に起きた能登半島地震は、高齢者らの暮らしを支える介護事業所も直撃しました。長引く避難生活による介護サービスの利用者や介護職員の減少、収入減……。地域から介護基盤が失われれば、人口流出が加速することにもなりかねません。能登の介護事業所をどう守るかは、人口減少と高齢化が進む日本の介護のあり方を考えることにもつながります。13年前の東日本大震災で被災した事業所の運営にも関わる早坂聡久・東洋大教授(高齢者福祉)に、事業継続のために今、何が必要かを聞きました。 【写真】東洋大教授の早坂聡久さん=東京都 ――能登の介護事業所の現状をどう見ていますか。 地震から5カ月が過ぎても水道や道路などの生活を支えるインフラが寸断され、多くの高齢者や介護職員が、避難先から元の住まいに戻れていません。特に、石川県珠洲市、輪島市、能登町、穴水町といった奥能登地域は高齢化率が5割前後と高く、他地域への人口の流出もあり、もはや、存続が危ぶまれる「限界集落」のような状態です。 ――それでも、休止していたデイサービスや訪問介護などの事業所が、少しずつ再開し始めています。 介護事業所の利用者が減り、職員も不足するなかで、地域の福祉を担うという自負で何とか歯を食いしばって立ち上げているのが現状です。 再開しても、特に、奥能登では小規模な事業所も多く、事業継続のための体力には限界があります。 最大の問題は、介護職員の不足です。もともと人材難だったことに加え、震災で避難先へ移ったり、先行きが見通せず退職したりしています。地域の労働人口の減少が起きているのです。 介護サービスは、住み慣れた自宅や地域で暮らし続けるために、なくてはならないインフラです。介護事業所が再起できなければ、高齢者らが避難先から地元に戻る意欲をなくしてしまいかねません。 国立社会保障人口問題研究所の推計では、奥能登の4市町の人口は、2050年には、20年から5~6割減ると推計されています。介護事業所を失うことは、人口減少に拍車をかけることになります。 ■介護職員の優先入居・公務員ヘルパー…行政は踏み込んだ支援を ――介護事業所が存続するには、どうすればいいでしょうか。 事業所がある地域の自治体や石川県が、介護職員が早く地元に戻れるように、住まいの維持に向けて支援することが不可欠です。例えば、仮設住宅への優先入居や、みなし仮設住宅の利用要件の緩和といったことです。すでにある資金の貸し付け事業に、介護事業者をスムーズにつなぐことも必要でしょう。 また、事業所が再起できず廃業する事態に備え、地元自治体は、公的サービスで補うことを考えてほしい。事業所が自力でなんとか維持してきた段階から、行政が一歩踏み込んで支援する局面にきています。 ――具体的にどんな方法がありますか。
朝日新聞社