「女性として見る気が起きない」→「じゃあ、やってみろ」入社6年目で抜擢、THE Wプロデューサーが語る“舞台裏”
「改革」はなぜ受け入れられた?
――クリエイティブ・チームですね。そういう動き方は上の人たちにはすんなり受け入れられたんですか? 上に恵まれていて、「やってくれるんだったら、好きにしていいよ。お前に任せる」という感じでした。あまりに変えよう変えようと言いすぎて、ウザすぎたんでしょうね(笑)。 なので、最初の認識は、「片岡がまた変なこと言い出して勝手に何かやってるぞ」だったんですよ。特に期待もされていなくて、むしろ周りからは笑われているような感じで。 でも私はガン無視で、とにかく『THE W』を立て直したかった。私が怖かったのか、仕上げてきたものが思いのほかよかったのか、途中から何も言われなくなりました(笑)。 ――ポスター以外には、どんな施策を? 2023年は、ロゴの変更、メインビジュアルの作成、HPの刷新など、とにかくビジュアル周りを変えました。ポスターは、SNSでのインプレッション数も良かったですが、それ以上にファイナリストのみなさんが本当に喜んでくれたことが嬉しくて、泣きそうになりました。 放送当日はファッションや広告を撮っているカメラマンをアサインして、大会の裏側写真をリアルタイム更新していく施策を実施しました。『THE W』の裏側ってみんな穏やかで素敵な面もありながら、やっぱり本番前の舞台袖はピリッとかっこいい顔になる。1年目でそのギャップに本当に感動したんです。視聴者のみなさんにも女性芸人のめちゃくちゃかっこいい姿を見てほしくて。 今年は昨年とはガラッと変えた雰囲気のメインビジュアルを作ったんですが、昨年を超える好評をいただきました。去年で実績を作れたからか、お金を出してくれて(笑)、渋谷のセンター街付近にも掲出しています。あとは、心をぐっと掴まれる芸人さんの写真を撮っていらっしゃる、かが屋の加賀(翔)さんに公式カメラマンとして入っていただいています。 ――おっしっていた通り、プロデューサーに抜擢される前の2023年の時点で、やっていることがディレクターの業務の範疇を超えていますね。 多分テレビ局より広告代理店のほうが向いてますよね(笑)。芸人さんが大好きなので、どうすれば芸人さんが最大限のパフォーマンスを発揮できて、それがテレビやネットで観ている人に届くかを考えて、やれる施策をやったつもりです。 ――数多の賞レースがある中で、『THE W』ならではの良さはどこだと考えられていますか? ある意味賞レースらしからぬところこそが良さですかね。賞レースというとすごくピリピリしていて、それこそ『M‐1』や『KOC』は「人生かかってる」みたいな緊張感があるじゃないですか。『THE W』の裏って、すごい穏やかなんですよ。芸人さんたちもすごく朗らかで、みんな互いのことを尊重し合っていて。でもぬるいっていうわけじゃなくて、みなさんそれぞれのスイッチがある。 だからスタッフも芸人さんがいちばん気持ち良くやれるように、と動いているところがあります。今のところスタッフは男性が多いのですが、接するのは女性芸人さんなので、細部のケアもすごく大事で、リハの段階での声の盛り上げ方や物出しのケアなども気を配っています。 ――「女性芸人も男性芸人も関係ない」という意見は根強いと思います。そして真にフラットなら、“女性”に限定する『THE W』の意義とは? という話にもなってくると思うのですが、そのあたりはどう考えていますか。 そこは難しいところだと思います。でも、男性優位とされてきたお笑い界の中で、女性芸人は勝負できる表現の幅が狭かっただけで、元々ポテンシャルはあった。だから『THE W』を女性だけの大会にしたことで、そういう本来の能力が遺憾なく発揮できるようになったと思っています。 ただ、個人的には、これは自分が女だからかもしれないですけど、「女のほうが面白い」って思うんですよ。女のほうが複雑でわかりにくくて、奥深くて、面白くないですか?