法然、曲折80歳の人生と根本の教えとは 「笑い飯」哲夫さんも登壇、京都市で連続講座
浄土宗の開宗850年に合わせて、開祖・法然の教えや、総本山・知恩院(京都市東山区)の成り立ちを解説する連続講演が、東山区の京都国立博物館(京博)で開かれている。仏教に詳しいお笑い芸人やイラストレーター、大学名誉教授らがこれまでに登壇。「ただ一向(ひたすら)に念仏すべし」と説いたという根本の教えや、総本山の境内が江戸時代に整えられてゆく背景が語られた。 【写真】仏教などについて語る笑い飯の哲夫さん 10月24日はお笑いコンビ「笑い飯」の哲夫さんが、京博主任研究員の井並林太郎さんとトークイベントに臨んだ。12~13世紀を生きた法然について、井並さんは、浄土思想を説いた7世紀の唐の僧・善導に、夢の中で出会う逸話があると紹介。哲夫さんは「仏教あるある」とうなずき、東大寺の大仏造立に携わった奈良時代の高僧・行基にも似た話があると述べた。 「法然上人絵伝を考える」(10月13日)は、京都市立芸術大で学んだイラストレーターのnixon(辻村知夏)さんを招き、絵伝を通じて開祖の生涯や教えに迫った。その教えについて、井並さんは「『南無阿弥陀仏』と口に出すだけで救われますよ」と、簡単な方法で極楽往生できると説き、お金のない庶民にも広まったとする。ただし、「この行(称名念仏)以外は必要ないとまで言ったので弾圧された」と説明。絵伝に描かれた、9歳での出家から80歳で亡くなるまでの法然の人生の曲折をたどった。 一方、辻村さんは、自作の紙芝居「法然上人一代記」について解説した。紙芝居は絵伝をベースに描き、知恩院の機関誌に載った作品。出家時の母との別れでは桜、流罪後に京都へ戻るところには紅葉を入れ、「絵伝は季節感も工夫しており、再現したかった」と述べた。 工夫したのは、臨終の場面。「来迎を待って法然が横たわる中、阿弥陀如来が西からやってきて、見守る群衆もいる。どう配置するか悩んだ」と語り、現代的なカメラワークの切り口も取り入れたという。 前日の12日には佛教大名誉教授の今堀太逸さんが「知恩院と天下和順(てんげわじゅん)」と題して講演した。知恩院は亡くなった法然をまつる廟堂があった地で13世紀に開かれたものの、当初は弾圧された。だが、16世紀にかけて天皇家や徳川家康の祖先に当たる三河・松平氏との関わりを深めると、天下人になった家康・秀忠・家光が順次、境内を整えてゆく。 今堀さんは「近世の京都で天皇家、徳川家、庶民の三つが崇敬する寺になり、人々が平和な年月を送れるよう見守る存在とされた」と述べた。 講演は京博の特別展「法然と極楽浄土」(12月1日まで)の一環で開かれた。11月9日、16日にもある。入館料や事前申し込みが必要。