“中国で中国人のために作る日産車”「N7」が登場。反撃の狼煙となれるのか
中国市場向け電動車の開発主体は東風日産へ
強調しておきたいのは、この新型車が中国で開発され、そして生産されるというところだ。日産にとって中国市場は北米と並ぶ重要なマーケットだが、いまや現地のニーズは日欧米とは異なることが鮮明になってきている。 しかも、その技術革新のスピードは異次元と言えるほどに速い。信じられない低価格でそれを実現する新たなビジネスモデルも構築されている。すでに日産は、今後の中国市場向け電動車は技術開発の主体を東風汽車に移管する方針を表明しており、N7はその具体例として初めて世に出たモデルなのだ。
世界最先端のUX技術が盛り込まれるはず
広州モーターショーではインテリアや関連する詳細は明かされなかったものの、市販に向けた期待を持たせるヒントはいくつか提示された。まず、注目すべきはインフォテインメントシステムの開発をかねてより協業を表明しているファーウエイ(HUAWEI)とともに行ったことである。 また、駆動するSoCチップは、Qualcomm の最新第4世代「Snapdragon 8295P」。32GB(RAM)/256GB(Storage)のスペックを誇り、その演算速度はまさに爆速。タッチスクリーンを介して、シームレスでパーソナライズされた走行体験を提供する。 さらに、中国自動運転技術大手のモメンタとともに開発した究極のADAS(=NOA:Navigation on Autopilot:レベル2++のいわゆる市街地対応ADAS)も搭載。現地の法規制に適応したUX技術がふんだんに盛り込まれていることは想像に難くない。
日米欧と異なる中国市場の価値観に応えるのが急務
いま中国のユーザーが重視するのは車内の利便性と快適性、そして自動運転関連技術であり、もはや動力性能の優先度は低い。それほどまでに急速かつ独自の変化を続ける中国マーケットに対応するには、独アウディが新ブランド「AUDI」を立ち上げたように本国ではなく中国現地で開発する以外に方法はなさそうだ。 日産においても、日米欧ほか、ある程度設計の使い回しがきくクルマと、中国現地パートナーが主体となって開発/生産されるクルマが並立することになる。すでに多くの自動車メーカーがこの事実に気づいており、そのハンドリングが問われる時代になっている。 日産は、“Excitement by NI”という新たなブランドキャンペーンを開始している。ゆくゆくはアウディのように、「NI」という新たな中国専用ブランドの誕生も予感させる。 日産にとっては現状、シルフィ頼みとなっている中国市場において再び存在感を増すには、「N7」以降に登場する新エネルギー車の成功が不可欠であることは確か。もうひとつの巨大市場である北米市場での失地回復と並び、現在の苦境から脱する新たな戦略が軌道に乗ることを期待したい。