マイナ保険証“本格運用”まで4か月切る「いずれ致命的なトラブルが起きるのでは」 現役開業医が不安を吐露
トラブル発生も「医療機関任せ」
オンライン上の資格情報更新の遅さだけでなく、システムのセキュリティーへの不信感も強い。A医師のクリニックでは、朝、顔認証カードリーダーの電源を入れたところ、エラーで起動しないことがあったそうだ。 「その日はオンライン資格確認をサポートしてくれるコールセンターに電話してもつながらず、丸1日使用中止にしました。そして後日、カードリーダーを設置した業者に点検を依頼すると、『なんらかの原因によって通信設定が変更されていた』と告げられました。 結局は設定をリセットして改めて使えるようになりましたが、根本的な原因は業者にも分からず、コールセンターも木で鼻をくくったような対応をするばかり。医療機関のネットワークは全国に張り巡らされていますし、こんなに緩いセキュリティーで大丈夫なのかと不安を感じます。しかし、残念ながら国から医療機関へ、それを解消してくれるような説明はない状況です。 オンライン資格確認にしてもマイナ保険証にしても、こんなに強引に進めているのだから、せめて『トラブルがあっても国が責任を持って解決にあたります』という姿勢でいてほしいと思います」(A医師)
IT専任スタッフの必要性を感じるが…
サポート体制が整っていない上に、必ずしもIT知識が豊富ではない医療機関側に対応をゆだねるのは、あまりに酷ではないだろうか。A医師も「IT専任スタッフの必要性を感じるが、物価高の中で診療報酬の上昇も進まない状況(本年度は+0.88%)を考えると、個人経営のクリニックでは現実的とは言えない」という。 「政府はマイナ保険証の利用率を上げるため、医療機関へ一時金を支給するキャンペーンなどを行っていますが、そんなことではなく、使い勝手やセキュリティー向上にお金を使ってほしいと思います。 とにかく日々システムを使っていて感じるのは、圧倒的な『技術力不足』と『患者目線不足』です。こんなことでは、いずれ致命的なトラブルが起きるのではないでしょうか。 現状のままでは、マイナ保険証を使ったからといって病気の治癒が早まるわけでも、痛みが軽くなるわけでもありません。患者さんにとってもっとも重要なのは、素早い判断と的確な治療、人のぬくもりが感じられる診療のはず。デジタルはあくまでそれを補完する“道具”にすぎないのです」(同前)