女子代表親善試合、ブラジルから見たなでしこジャパン戦の意義
2試合とも多くのサポーターが集結
ブラジル人ジャーナリストたちに総括してもらうと、時間帯によってスペースが空きすぎた中盤や、2試合で5失点となった守備面に対して、辛口な意見が飛び出した。同時に「この後、格下のニカラグアとも親善試合をするのだから、新たなテストはそこで行うことにして、強い日本との2戦目は、勝利した1戦目に修正を加える形で完成度を上げる方向が良かったのでは、と思う。それでも、アルトゥールは試したいことを、強い相手だからこそ、試したかったのだろう」とも理解していた。 ブラジルは2027年女子W杯開催国の招致に立候補するため、国を挙げて女子サッカーを盛り上げていきたいというのもある。 今回、1戦目は平日である木曜日15時15分という条件の中で、観客数は7500人弱。2戦目は日曜日11時キックオフで1万3000人強。今年、女子サッカーのホームゲーム史上最多入場者数記録となった、女子W杯直前の7月2日に行われた親善試合チリ戦(inブラジリア)の1万6000人弱には及ばなかったものの、駆けつけたサポーターは大いに盛り上がった。 スタンドの一角を占めていた少女たちは「強豪同士の代表戦をスタジアムで見られるのはとてもうれしい」と話し、スター選手たちの名前を呼びながら、目いっぱいの声援を送っていた。 また、コリンチャンスのトレーニングセンターを使って練習していたため、見学に来ていたクラブの男子下部組織の少年たちは「あれほど魅力的な試合が見られるのだから、女子サッカーはこれからもっと注目されるに違いない」と語っていた。
「再び女子代表の魅力を実感してもらえた」
最後に、マルタが語った日本戦の意義を紹介したい。6度のFIFA最優秀選手賞を獲得し、圧倒的な実力と人気でブラジルのみならず、世界の女子サッカーを牽引してきたマルタ。現在37歳、今年、自身のW杯への挑戦はこれで終わったと宣言したものの、やはり最後となるであろう五輪に意欲を燃やしている。 「サッカーとは“感動”がすべてを要約する。特に1戦目は、選手とスタッフみんなにとって感動的だった。そしてもっと大事なのは、試合を見に来てくれたサポーターに、あの激闘と勝利によって感動を伝えられたこと。週の半ばで多くの人たちは仕事をしている難しい時間だったのに、私たちに価値を置いて来てくれた。だから、サポーターにすごく感謝しているし、再び女子代表の魅力を実感してもらえたことが、女子サッカーの今後にとって重要なものだった」 彼女にとって、目標は勝利やタイトルだけでなく、女子サッカーのさらなる発展だ。選手やジャーナリスト、サポーター、いずれの意見でも“強い日本”という言葉が常に出てくるし、その日本と2試合できたことが、ピッチの内外で非常に良かったと言っていた。ブラジルにとっての収穫は、日本にとっても誇れることであるに違いない。