【高校サッカー選手権】前橋育英、総体予選で敗れた雪辱を果たし4連覇 共愛学園は悲願の初優勝を逃す
第103回全国高校サッカー選手権群馬予選は11月9日、前橋市のアースケア敷島サッカー・ラグビー場で共愛学園と前橋育英による2年ぶり2度目の決勝対決が行われ、前橋育英が延長の末3-0で勝利し、4年連続27度目の優勝を遂げた。3度目の決勝に進んだ共愛学園の悲願はならなかった。 【フォトギャラリー】共愛学園 vs 前橋育英 目下プレミアリーグEASTで暫定5位の前橋育英は立ち上がりからボール支配率で圧倒し、相手陣営で試合を進めた。主将のボランチ石井陽(3年)が最適なパスを左右と縦につなぎ、右の白井誠也(2年)と左の黒沢佑晟(3年)の両2列目が外からスピード豊かに進入し、鋭いクロスを配給した。 前半に記録した6本のシュートのうち、4本が決定打だった。 まず2分、ボランチ柴野快仁(2年)の左クロスから白井が合わせた一撃はバーに弾かれ、10分に1トップの佐藤耕大(3年)が右SB瀧口眞大(2年)の右クロスからボレーで放ったシュートは、GK佐藤明珠(3年)の好守に阻まれる。 25分にはMF平林尊琉(2年)の右クロスを佐藤が打ち、右CKから左SB竹ノ谷優駕(2年)が28分に放ったヘッドもわずかにバーの上を通過し、攻勢の時間帯が多くありながらも先制できなかった。 インターハイ(総体)予選準決勝で前橋育英を1-1からのPK戦で倒した共愛学園は、相手の球際の強さや寄せの速さに苦戦し、複数の効果的なパスをなかなか繰り出せなかった。守備に労力を消費する時間が長く、前半のシュートは1本。23分に右2列目の清水陽太(3年)の正確な右クロスから、左2列目の中野一楓(3年)がヘッドで合わせたが、惜しくも左に外れた。 攻め込まれて失点と背中合わせの危機が何度もあった共愛学園だが、主将のCB阿久津祐樹(3年)が束ねる忠実で粘り強い守備、GK佐藤の好守などで点をやらなかった。 後半に入っても前橋育英が主導権を握った。故障から復帰して間もないFWオノノジュ慶吏(3年)が10分から登場し、突破力とシュート力にロングスローで相手の守備網を揺さぶった。しかし27分の柴野、30分の佐藤の決定打はいずれもGK佐藤に阻止され、絶好機は前半より少なかったが後半も7本のシュートを放ちながら無得点。 共愛学園は前半同様、守備に追われる展開だったが15分にビッグチャンスを迎える。ボランチ村山優成(3年)の蹴った左FKから、CB天田諒大(3年)がヘディングシュートしたが、無情にもバーに嫌われた。 前橋育英が攻め、共愛学園が守る、という図式で80分を終了。0-0のまま延長戦に突入した。 その前半7分、前橋育英が決勝点をものにした。攻撃参加した瀧口が柴野からボールを預かると、佐藤とパス交換してゴール前に進出し、右足で豪快に蹴り込んだ。 その3分後には、石井の放り込んだ左FKのこぼれ球をオノノジュが素早く拾って、左足でゴール右隅に突き刺す。後半6分にも途中出場のFW大岡航未(2年)が、オノノジュの最終パスから3点目をゲットして勝利を決定づけた。 前橋育英が延長にもつれ込んだ持久戦を3-0で制し、総体予選で敗れた雪辱を果たした。 山田耕介監督は「共愛学園はロングスローにCK、FKをはじめ、こぼれ球を拾ったらサイドからどんどんクロスを入れてきた。鍛えられていたし、やることが徹底していました」と相手を思いやると、「なかなか取れなかったが、互いに疲弊している中、延長でよく決めてくれました」とファイトした選手を褒めた。 総体予選の再現と悲願の初優勝こそ逃したが、共愛学園の戦いぶりも見事だった。創部から指導し、就任23年目の奈良章弘監督は「チームに一体感があり、プラン通り自信を持って戦ってくれました。これからも選手権に“行けたらいいな”ではなく、“行くんだ”という強い気持ちでチームをつくっていきます」と捲土重来を誓った。 (文・写真=河野正)