部下から話しかけてもらえない…人望ゼロのダメ上司を変えた「仕事の本質を突く後輩の言葉」
チームメンバーのモチベーションを高める仕事の任せ方とは何か。人材育成・組織風土改革コンサルタントの園部浩司さんは「私がマネジメントに悩んでいたとき、部下たちが入れ替わり立ち替わり笑顔で相談にくるマネージャーがいて、その彼は何にでもOKを出しているように見えた。その後、部下のモチベーションを高めるためには、誰かに言われたからではなく、自分で決めて自発的にやっているという『自己決定感』が必要だと気づいた」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、園部浩司『変化をもたらすリーダーは何をしているのか?』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。 ■一方的に決められたメンバーは「押し付けられた」と感じる あなたは、チーム全員の仕事の分担をどのように決めるのがいいと思いますか。 リーダーが正しく業務の洗い出しを行い、目標や業務計画をきちんと立てて、メンバーの分担を事細かに決めてあげる。それが一番早くて、合理的。それこそがリーダーシップを発揮することである。そんな考えを持っていませんか。 それは一見、正しいように感じられると思います。 しかし、多くの人は、自分で考えたり決めたりすることにモチベーションを感じます。人から一方的に押し付けられるのは嫌なもの。 いわゆるやらされ感です。 私が本気で変わろうと考えて、周りを見るようになった時、少しずつそのことに気づきました。 するとまずは、すぐ近くの部署に、「こんなリーダー、上司になりたい」と思えるようなマネージャーの存在に気がついたのです。 その人のもとには、部下たちが入れ替わり立ち替わり相談に行っていて、さながら“行列のできるマネージャー”といった体でした。
■後輩に言われた「人には感情がある」という言葉 しかも相談に行く部下は誰もが、笑顔でそのマネージャーと話をしています。 そして、部下が「これはこういうふうにやろうと思うのですが、どうでしょう?」と持ち掛けると、そのマネージャーは「いいよいいよ、思ったようにやればいいよ」と何にでもOKを出しているように見えたのです。 それは、私が経験したことのない光景でした。 まず、部下が自ら相談に来ることは、あまりありませんでした。 それに、私に笑顔で話しかけるようなこともありません。 また、私自身が部下に対して、そんなに明るく、耳ざわり良く、GOサインを出してはいませんでした。 「人には感情がある」となかなか気づけなかった私でも、やはり部下に嫌われるのは気持ちのいいものではありません。 “部下に嫌われ続けるマネージャー人生”なんて嫌だなと素直に思いました。 その時、後輩に言われた「人には感情があるんですよ。園部さん、そんな簡単なこともわからないんですか⁉」という言葉の意味が、少しわかるようになりました。 要は、部下の感情を汲み取らなければ、信頼されないし相談にも来てくれないということです。 今思えば、とても当たり前のことですが、当時の私には、全く思いも寄らないことでした。 信頼できないリーダー、相談したくないリーダーと、部下との間に、心地よいコミュニケーションが生まれるはずがありません。 ただ、リーダーから部下に、一方的に仕事の指示を出しているだけでは、部下のモチベーションが上がるはずがなかったのです。 ■「自己決定感」がモチベーションを高める 「私も“メンバーに気軽に相談してもらえるマネージャー”を目指そう!」 私は理想とする明確なリーダー像をイメージし、まずはそのリーダー像を実践するのに参考になりそうなビジネス書を片っ端から読みはじめました。 そのたくさんのビジネス書の中から見つけたのが、「自己決定感」という、リーダーにとって非常に重要な考え方でした。 この言葉の基になっているのは、1985年にアメリカの心理学者、エドワード・デシ氏とリチャード・ライアン氏が提唱した「自己決定理論」で、自分から自発的に決定することがモチベーションや成果に影響するというものです。 この理論に端を発して、モチベーションを高めるためには、誰かに言われたからではなく、自分で決めて自発的にやっているという「自己決定感」が必要であるという考え方が広まったのです。 「自己決定感」とは、噛み砕いて言うと、 「リーダーが決めるのではなく、まず部下やメンバーに考えてもらおう」 「部下やメンバーに自分で決めてもらおう」 という考え方です。 「人は自分で決めたい動物なんだな」と、自分のこれまでの経験でも、一方的に上司に指示されるより、自分の意見を聞いてくれたり、やり方に裁量を持たせてくれた時にやりがいを持って仕事ができたなと思い返し、やっと腹落ちしたのです。