ネットを使った不登校児支援、自治体と連携相次ぐ 登校せずとも出席扱いに
不登校による出席日数不足、内申点…進学時のネックになる可能性も
同機構の中島武・代表理事は「通信制高校の運営で、不登校の子どもを持つ保護者の方と話してきたが、不登校の子どもがいざ進学しようと思ったときに、出席日数が足りなくて、公立高校を受験できないという課題を目の当たりにしてきた」と語る。 自宅にいながら、出席しているのと同等と認められる通信制高校のシステムを小中学校でもできないか、と文部科学省にも相談に行ったが、「通信制の小中学校はできない」と断られたという。しかし、2017年2月に、学校以外で学ぶ子どもたちを支援するための法律「教育機会確保法」が施行され、状況が動き出した。法律の成立を受け、新しい学習指導要領には初めて「不登校児童への配慮」も盛り込まれた。 中島代表理事は「自治体と連携することで、自宅学習も正式な学びと認定されるのなら、後ろめたい気持ちを持たずに学ぶことができる。時間が区切られている、一斉授業の形式が合わない、と感じている子どもが、映像授業などを使ってどんどん学習を進めていけることはよくあること。この仕組みで、しっかり学校を卒業できれば、子どもの選択肢を広げられる」と説明する。
「家で休みたい子もいる」「学校復帰を前提としないで」などの声
しかし、プロジェクト発足の発表時、トラブルもあった。「全ての不登校児を学校に戻す」というミッションを掲げていたため、「不登校になった子どもの気持ちを無視している」などの批判が相次いだのだ。 また、IT企業が不登校の子供の支援に乗り出したことで、昔から支援活動をしている関係者や保護者の中には「なぜ現場を知らないIT企業が支援するのか」「学校の画一的な学び自体が苦痛なのに、自宅ですら休めないのか」などの思いを持つ人もいる。 「IT企業がビジネスチャンスとして教育を捉えているのではないかという批判もある」、とぶつけると、中島代表理事は「N高は、通信制高校だが、IT企業が持つさまざまなプログラムを提供することで、仕方なく行くのではなく、生徒自らが行きたいと思えるようになってきた。これまでの既存の教育観にとらわれず、IT企業の知見や、考え方を教育に入れていくことは、よい効果もあるのではないか」と話す。 前出のエデュアスの佐藤取締役も「不登校だとしても、基礎学力を身につけていくことは社会人になっていく上で絶対に必要なこと。なるべく楽しくわかるよう工夫しているし、内容も必要最低限のものとしている。学ぶのが無理と決め付けないことは大切ではないか」と話している。 (取材・文/高山千香)