ハリル解任でW杯は勝てるのか? 4年の時間が無になりかねない仰天人事
グループリーグでサッカー王国ブラジル代表を撃破した、1996年のアトランタ五輪に臨んだU-23日本代表を率いた西野新監督は、J1歴代最多となる通算270勝をマーク。柏レイソルとガンバ大阪の監督時代には、ACLを含めて8個のタイトルを獲得している。 もっとも、2012シーズン途中から指揮したヴィッセル神戸では11月に解任。2014シーズンから率いた名古屋グランパスでも、好成績を残せないまま2年で退任している。監督として約2年半のブランクがあるうえ、ロシア大会へ向けて準備できる時間は実は3週間あまりしかない。 海外のリーグはシーズンの閉幕へ向かい、一方でJ1は週2試合を戦う過密日程が5月20日まで続く。ハリルホジッチ監督は同21日から関東近郊で第1次キャンプを行う青写真を描いていたが、西野監督のもとでもロシア大会へ向けたスケジュールは変わらない。 しかも、ある程度の構想を描いていた前任者と異なり、西野監督はこれから代表候補選手のリスト作成に着手しなければならない。残された時間を考えれば、独自の色を出すほどの大きな変化を加えることは極めて難しいと言わざるをえない。 フランス語で「1対1の決闘」を意味する『デュエル』を合言葉に、ハリルホジッチ監督は縦に速いサッカーを標榜してきた。3月のベルギー遠征でも「縦、縦」と繰り返されたベンチからの指示に対して、選手たちがピッチ上で大きなストレスを溜め込んだとされる。 日本サッカー史上でも初めてとなる、ワールドカップイヤーにおけるA代表の指揮官交代は、監督を取るか、選手を取るかの状況にあると判断した田嶋会長が、後者を選んだことに導かれている。実際、西野監督が目指すスタイルに同会長はこう言及している。 「これまでやってきたことを全否定することはできませんが、監督によってやり方が違うのも事実。ハリルホジッチ監督が目指した縦に速い攻撃をまっとうできるか、ということも踏まえながら、私の意見としては日本らしい、しっかりとボールをつないでいくサッカーを志向してほしいと思っています」 あくまでも西野監督の意向を尊重する、と田嶋会長は強調した。それでも、ボールポゼッションを掲げながら木っ端微塵に粉砕された、ザックジャパン時代の「自分たちのサッカー」に回帰しかねない、つまりブラジル大会後に積み重ねられてきた約4年間もの時間が無に帰しかねないリスクも、日本だけでなく世界中を驚かせた今回の電撃人事は伴っている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)