バイオリンの調べに合わせてラップバトル、既成概念に挑むブラジルの音楽家
ブラジルの音楽家マリア・ルイザ・カルズニーさんは、バイオリニストとして成功するためには、最大都市サンパウロ郊外の労働者階級が住む地域を離れ、富裕層や権力者のためにクラシック音楽を演奏する必要があると考えていた。だがある日、ラップバトルでバイオリンを演奏したところ、居心地の良さを感じたという。 バイオリンの調べに合わせて繰り広げられるラップバトル――バイオリニストのマリア・ルイザ・カルズニーさんは、「バイオリニスタ・チャボサ」という名で活動している。 オーケストラに所属していたが、より芸術的な表現ができるのではないかと思い、ラッパーたちの横で演奏したところ、居心地の良さを感じたという。 ブラジル最大都市サンパウロ。ここでのラップバトルで演奏したカルズニーさんは、観客に「貧民街出身の人にバイオリンを演奏するのは不可能だろうと思っていた」と語った。 カルズニーさんの音楽追及の旅は、身近なところから始まった。通勤電車内での演奏だ。カルズニーさんは、電車の乗客を相手にポップ音楽とクラシック、インターナショナルとブラジルのファンクをミックスして演奏してみた。 「ドアが開いていないときは、中に入ってぶっ壊すの」と彼女は言う。カルズニーさんは、ブラジルの辺境の文化を主流に変えたいと話す。また自分と同じように、大都市の郊外に住む人々のために、作品や芸術、表現の境界線を押し広げたいと考えている。 「ブラジルの辺境のバイオリニストが、ヨーロッパ流に演奏する必要なんてない。そんなこと、どこに書いてあるの?私はオーケストラのバイオリニストと同じように何時間も練習したから、とても上手に演奏できる。いっぱい勉強したので、自分の文化のためにその能力を使って、私の人生の問題やシナリオに取り組んでいるのだ」