「こんなに毛を嫌うのって、世界でも日本だけ」資本主義とルッキズムの街、東京の象徴“美容脱毛サロン”で働く21歳の女性を描いた『ナミビアの砂漠』はどのように生まれたのか
人生って変えられるし、変わる
──『ナミビア』は、フェミニズムを意識させられる作品だとも思いました。影響を受けたものなどはありますか? もともと、欲望に嘘をつかない女性が出てくる映画がすごく好きです。クレール・ドゥニの映画とか作品性はずっと意識していますね。 身勝手で、物語に従属しない確固たる自我を持ってそこにいるな、という女性が好きです。 ──物語に従属しない女性を映画におけるフェミニストと捉えたら、カナはかなりのフェミニストですよね。 うん、うん。カナ自身が、自分をフェミニストだと思っているかというと、それはわからないですけどね。 ──このインタビューシリーズは、新世代の映画監督を取り上げるものです。映画というカルチャーは、同世代や下の世代に届くものだと感じていますか? まだ20代の私ですら、下の世代のことはもう把握できていないことが多くて。先日4つ年下のスタッフと話していたら、映画はタブレットでサブスクにあるものだけを見ているといっていて。 わたしも今やテレビはほとんど見ないけれど、家で少しでも大きい画面で映画を見たいから一応モニターとして使ってるけど、下の世代はテレビを家に置いていない人も多いんだなって。 考えてみたらそりゃそうか、と思うんですが、4歳離れるだけで視聴環境がこんなに違う。 そうした世代に普及する映画というのもあるのだろうなと思いますが、そんな中で自分になにができるだろうと考えます。 ──あまり映画を観ない人に『ナミビアの砂漠』をすすめるなら、どんな言葉になりますか。 映画って、人生を変えると思っています。こういうと大仰に聞こえるかもしれないけれど、いつもならぐっと堪えてしまうタイミングで「うるせー」といえるようになるとか。 小さいことに影響して、その小さなきっかけからまずは生活が変わっていく。生活の積み重ねが人生だから、人生って変えられるし変わります。 そういう映画を作れたと思っているので、観てもらいたいですね。 取材・文/ひらりさ 撮影/石垣星児 〈作品詳細〉 世の中も、人生も全部つまらない。やり場のない感情を抱いたまま毎日を生きている、21歳のカナ。優しいけど退屈なホンダから自信家で刺激的なハヤシに乗り換えて、新しい生活を始めてみたが、次第にカナは自分自身に追い詰められていく。もがき、ぶつかり、彼女は自分の居場所を見つけることができるのだろうか……?
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