「演劇をやっている者に与えられるギフト」 高田夏帆×戸田恵子にインタビュー! 舞台『裸足で散歩』が全国17箇所で上演へ
――ニール・サイモンの魅力はどんなところにあると思いますか?また、コメディ作品において心がけていることを教えてください。 高田 台本をひたすら読んで、稽古をする毎日の中で、私は正直どこが“笑いどころ”なのか、あまり掴めていなかったんです。でも、初日を迎えて、公演を重ねていくと、お客様が同じところで笑ってくださって、“笑いどころ”がだんだんと分かっていって。そこからブラッシュアップをしていったんですね。だから、ニール・サイモンの作品は、本番になって、実際に演じてみないと分からないところが面白いところなのかなと思いました。 コメディに関しては……稽古中の戸田さんがすごく面白くて。いろいろと技を盗もうと思って、全く同じことを真似したりしていました(笑)。 戸田 この作品は、ニール・サイモンの初期の作品なので、とても若々しい作品ですよね。私は何本かニール・サイモン作品を経験していますけれども、『裸足で散歩』は、新婚のふたりと、ニール・サイモンの初々しさとが重なって面白いなと思いますし、やはり会話の妙といいますか、みんなで交わしていく会話のテンポ感が面白い。 新婚夫婦が喧嘩をして、互いにいろいろなことを出し切って、ステップアップしていく。そんなごく普通の他愛もない日常を描いているんだけれども、それをコメディとして見てもらうわけですよ。狙いすぎず、奇を衒わずに。上質なコメディにしていきたいなと思うんです。 登場人物の誰も完璧な人がいなくて、最終的にみんなが少しだけ成長する。新婚とは対照的なおじさん・おばさんも少しは成長できるというところも面白いですよね。 ――改めて、舞台作品の面白さや魅力を教えてください。 高田 セリフや動きは同じですが、毎回違うコリーになっていることがすごく面白いです。点と点は同じだけど、描かれる線はいろいろな形をしている感じ。 前回、私の母が初日と、折り返しぐらいの日、千秋楽と3回観に来てくれたんですけど、「喧嘩の仕方やみんなとの交わり方が全然違った」、「序盤は緊張していたけれど、終盤はユーモラスだったよ」といった感想をくれたんですが、演じる私たちの気持ちが違えば、観ているお客様の受け取り方も全然違うんですよね。毎日の変化が面白いなぁと思います。 戸田 舞台は観客がいることで初めて成立しますよね。というか、お客様がいなかったら、もう誰のためにやっているか分からない。特にコメディはお客様が笑ってくださる箇所がいくつもあって、そこが一つのバロメーターになるんですよね。まぁ笑いが取れればすべてOKというものでもないかもしれないけれど、笑いがあれば演者のテンションは上がりますし、お客様と一緒に作っていく感じがありますから。 たとえ悲劇であっても、ぐぐぐとこちらに引き付けられているお客様の反応は分かります。で、その反応がわかることが舞台の恐ろしいところでもあって。感触が生で感じられるのは映像にない魅力だと思います。 映像はカメラワークや編集によって、俳優の顔がアップになったり、そのとき裏で何が行われているのかは分からなかったりするけれど、舞台は総合芸術なので、全部を見られているんですよね。私がセリフを喋っていても、他の人が横で何しているのかをじっくり観るのも観客の自由。すべてを見ていただくのは、俳優にとっては厳しいことでもあるんだけど、お客様にとってはそれが楽しいですよね。全部を生で見られる。それが舞台の魅力です。 取材・文:五月女菜穂 撮影:源賀津己 <戸田恵子> ヘアメイク:相場広美(マービィ) スタイリスト:江島モモ <高田夏帆> ヘアメイク:河井清子 スタイリスト:前 璃子(JOE TOKYO) 衣装クレジット タンクトップ/AOIWANAKA ☎03-6876-6855 ジャケット・ワンピース/Knuth Marf ✉knuthmarf@intokyo.co.jp その他スタイリスト私物 <公演情報> 『裸足で散歩』 東京プレビュー公演: 【曳舟】2024年10月10日(木)曳舟文化センター 【西東京】2024年10月13日(日) タクトホームこもれびGRAFAREホール 東京公演:2024年11月8日(金)~11月19日(火) 銀座 博品館劇場 他、大阪、茨城、神奈川、静岡、北海道(幕別、士別、中標津、札幌、大空)、宮崎、大分、宮城、愛知、香川公演あり。